賃貸不動産経営管理士とは?
賃貸不動産経営管理士は、不動産の賃貸管理業務に関する専門知識や技能を持つ資格です。主に、アパートやマンションなどの賃貸物件の管理・運営に携わる専門家であり、賃貸不動産所有者の資産の有効活用、不動産に居住し利用する賃借人等の安全・安心を確保するといった非常に重要な役割を担っています。
賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)において、賃貸住宅管理業務を行ううえで設置が義務付けられている「業務管理者」の要件とされた国家資格です。具体的には、賃貸住宅管理業者として登録を受けた業者は、各事務所に1人以上の業務管理者を置かなければなりません。そのため賃貸住宅管理業者にとっては必要不可欠な人材といえます。
賃貸不動産経営管理士になるメリット・資格取得のメリット
就職・転職・キャリアアップ
管理戸数が200戸以上の賃貸住宅管理業者(不動産管理会社)は、事務所に1人以上の「業務管理者」を設置することが義務付けられており、この要件を満たすのが賃貸不動産経営管理士です。町の不動産屋でも、200戸以上、賃貸住宅を管理する会社はたくさんあるので、その会社は必ず賃貸不動産経営管理士が必要となります。しかも、事務所ごとに1名以上必要となるので、5店舗あれば、5人の賃貸不動産経営管理士が必要ということなので、その分、需要も増えます。
就職・転職先でいうと、賃貸管理会社や不動産投資会社、銀行などがあります。不動産投資会社は、賃貸住宅に投資するからであり、銀行については、アパートローン等、賃貸住宅に対する貸し付け(融資)を行うので、賃貸管理士の資格は非常に有効です。
年収アップ
資格保持者は、資格手当として毎月5千円~1万円の給与上乗せということもあります。これだけでも年間12万円アップします。国内旅行であれば十分可能です。会社としての地位上がるポジションアップの可能性が高まります。
さらに、歩合給による給与アップも考えられます。そもそも、賃貸物件(投資用マンション・投資用アパート)の売買の場合、そのオーナーから売却の依頼を受ける場合が多いです。賃貸管理士の資格を持って、日ごろからオーナーと信頼関係を築いていれば、売却の際に仲介を頼まりたりします。売買が成立すれば、仲介手数料も入ります。仲介手数料によって、営業担当者の給料が増える会社もあるので、年収アップにもつながります。
例えば、歩合給として仲介手数料10%もらえるとすると、3000万の物件を成約させれば約100万円の仲介手数料が発生するので、約10万円が自分の給料として入ります。歩合給の割合が20%、30%の会社もあるので、そうなると、2倍、3倍と増えます。
宅建士でなくてもいいの?と思われるかもしれませんが、宅建士でない営業マンはたくさんいます。結局のところ、仲介できれば報酬は入るので、勉強するより、お客様との信頼関係を築くために時間を使う営業マンもいます。
不動産投資に役立つ
不動産投資を行うということは、賃貸物件のオーナーになるということです。不動産会社は、あなたを「たくさんいるオーナーの中の一人」として思っていない場合が多いです。あなただけを優先することはあまりありません。空室物件があっても、ずっと放ってあるということも珍しくありません。
私が知っている物件でも10年以上、借主が付かない物件があります。やり方によっては、借主を付けることができるけど、報酬が少ない等の理由で、不動産仲介会社も放ってあるのだと思います。
そんなときに、オーナー自身が、賃貸管理士としての知識を持っていれば、自分自身でどうすれば借主に入ってもらえそうか、考えること(空室対策)ができます。
実際に空室だった物件(アパート)は4万円と3万円の2部屋でした。合計すると賃料は、月7万円です。年間84万円。10年間空家なので、840万円の家賃分を取り損ねている状況です。非常にもったいないですよね。
つまり、賃貸物件のオーナーとして事業を行う場合にも、賃貸不動産経営管理士の資格の知識は非常に有用です。
賃貸管理士になることで、賃貸物件の維持管理、空室対策や家賃設定、市場調査など賃貸経営に必要なスキルを身につけることができます。
独立・起業・副業
将来的に独立して「不動産管理業者」として起業する際にも、この資格は大いに役立ちます。また、自ら投資用不動産を購入して、管理する場合も、必要に応じて、不動産管理会社に頼めば、その分管理費を押さえることができ、利益の確保にもつながります。このように、賃貸管理の知識を活かせば、独立起業も夢ではないですし、賃貸不動産オーナーとして、不労所得を得ることも可能になります。
賃貸不動産経営管理士の業務内容
以下に、賃貸不動産経営管理士の主な業務と役割を示します。
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物件管理: 入居者の募集や契約手続き、入居後の対応(家賃の徴収、共益費の管理、修繕やメンテナンスの手配)など、賃貸物件の日常的な管理業務を行います。
(入居者募集の提案)賃貸物件の空室を埋めるために、賃貸不動産経営管理士は入居者募集の戦略を立案・実行します。この提案には、地域の市場調査を基に適切な家賃設定や、物件の魅力を高めるための設備改善の提案が含まれます。また、広告媒体の選定や、不動産仲介業者との連携も行い、効果的に入居者を集めるための活動を行います。具体的には、不動産ポータルサイトへの掲載やチラシの配布など、集客を最大化するための施策を提案します。
(入居後の対応)入居者が契約をした後は、物件の維持管理や入居者対応が必要となります。賃貸不動産経営管理士は、設備の不具合や修理依頼に迅速に対応し、快適な居住環境を提供することが求められます。また、家賃の滞納対応や、トラブルが発生した際の仲介役として、入居者と貸主の間で調整役を担います。定期的な点検や保守作業のスケジューリングも行い、物件の価値を維持することも重要な業務です。 -
法的知識の活用: 不動産の管理には、賃貸住宅管理業法や借地借家法、不動産登記法、民法などの関連法令に関する知識が必要です。賃貸不動産経営管理士は、これらの法律を理解し、適切に運用することが求められます。
例えば、賃貸借契約書や管理委託契約書を作成する際に、関連法令に基づいて内容を確認し、法的に問題がないかをチェックします。これにより、後々のトラブルを防ぐことができます。
また、入居者とのトラブルが発生した場合、法的知識を活用して適切に対応します。例えば、家賃滞納や契約違反があった場合の対応方法を法令に基づいて判断します。さらに、賃貸経営に関する法的なアドバイスをオーナーに提供します。例えば、賃貸借契約の更新時期や条件変更に関する法的な助言を行います。 -
トラブル対応: 入居者とのトラブルやクレームが発生した際には、適切な対応が求められます。賃貸不動産経営管理士は、交渉力や問題解決能力を持ち合わせており、トラブルの解決に努めます。
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資産価値の最大化: 不動産オーナーの利益を最大化するために、賃貸不動産経営管理士は物件の適切な管理・運営を行います。これには、家賃や共益費の適正設定や入居者の確保などが含まれます。
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市場動向の把握: 不動産市場の動向やトレンドを把握し、オーナーに適切なアドバイスを提供することも重要な役割です。賃貸不動産経営管理士は、市場の変化に敏感であり、適切な戦略を立てる能力が求められます。
賃貸不動産経営管理士は、不動産業界におけるプロフェッショナルとして、安定した収益を生み出すために不可欠な存在です。
賃貸不動産経営管理士の将来性
賃貸不動産経営管理士の将来性は、不動産市場の拡大や需要の増加、法規制の強化などの要因により、非常に高いと言えます。以下に、賃貸不動産経営管理士の将来性についてのいくつかの要点を示します:
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不動産市場の拡大: 都市化の進展や人口増加に伴い、不動産市場は拡大の一途を辿っています。これに伴い、賃貸不動産の需要も増加しています。賃貸不動産経営管理士は、この市場の拡大に対応するために不可欠な役割を果たします。
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法規制の強化: 不動産業界には様々な法規制が存在し、これらの法規制は今後も強化される可能性があります。賃貸不動産経営管理士は、法的知識や規制遵守の重要性を理解し、適切な不動産管理を行うことが求められます。そのため、賃貸不動産経営管理士の需要はますます高まるでしょう。
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高齢化社会の影響: 日本を含む多くの国で高齢化が進行しており、高齢者向けの住宅や施設の需要が増加しています。賃貸不動産経営管理士は、高齢者向けの住宅や施設の管理において重要な役割を果たし、需要の増加に対応することが期待されています。
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プロフェッショナルとしての需要: 不動産管理は専門知識と経験を必要とする分野であり、プロフェッショナルな管理者の需要が高まっています。賃貸不動産経営管理士は、その専門知識や技能を持ち合わせており、不動産オーナーや管理会社から需要が見込まれます。
以上の要因から、賃貸不動産経営管理士は将来性の高い資格と言えます。不動産市場の成長に伴い、需要が増加し、賃貸不動産経営管理士の役割もますます重要性を増すでしょう。
賃貸不動産経営管理士になる流れ
賃貸不動産経営管理士になるまでの流れは下記3ステップです
- 賃貸不動産経営管理士講習(試験の一部免除)を受講(任意)
- 賃貸不動産経営管理士試験に合格
- 賃貸不動産経営管理士への資格登録
賃貸不動産経営管理士講習の受付
賃貸不動産経営管理士講習(試験の一部免除)は、賃貸不動産管理業務に必要な専門知識の習得と実務を遂行する能力を高め、賃貸不動産管理業の適正化及び資質向上を図るための講習です。
賃貸不動産経営管理士協議会の指定を受けた実施団体が、一定の指針に則った学習過程(講習)を行い、この講習を修了することによって賃貸不動産経営管理士試験において、修了年度とその翌年度の試験50問のうち5問が免除されます。「5点免除される」ということは、5点は正解扱いになるということなので、受講料12,000円を払って講習を受けるだけで5点もらえるので、できれば受講しておきたい講習です。
講習申込受付は、毎年4月下旬頃から9月初旬までです。できれば、スケジュール帳・アプリに予定として入れておきましょう。会場には定員があり、先着順となるため、遅くなると近場で受講できない可能性もあります。早めの申し込みをお勧めします。
賃貸不動産経営管理士試験
賃貸不動産経営管理士試験は、毎年1回、11月第3日曜に行われます。年1回の試験で、受験料は、12,000円です。試験時間は、13:00 ~ 15:00(120分間)です。四肢択一で、50問(前年度、本年度の賃貸不動産経営管理士講習(試験の一部免除)修了者は45問)です。合格点や合格率は、その年によって変わってきますが、合格率はおおよそ20%台後半で設定されており、それに合わせて合格点が決まってきます。今後、合格率は下がってくることが予想されるので、早めに合格しておきましょう。合格発表は、毎年12月第4木曜に行われます。
賃貸不動産経営管理士への資格登録
賃貸不動産経営管理士試験の合格者で以下の1または2を満たす者が、賃貸不動産経営管理士の登録を受けることができます。
- 管理業務に関し2年以上の実務の経験を有する者
- その実務の経験を有する者と同等以上の能力を有する者(実務経験2年とみなす講習の修了をもって代える者等を指す。)
実務経験がない方は、「2」の講習(賃貸住宅管理業務に関する実務講習)を受けることで登録を受ける要件を満たします。
賃貸住宅管理業務に関する実務講習
受講料は20,000円で、教材(テキスト冊子)を使った自主学習とインターネットを利用したeラーニングで行えるので楽です。受講期間は、60日で、受講票に記載された認証キーを入力したログイン時より起算して計算します。7時間のeラーニングによる講習は大変ですが、自宅でできるので、空いた時間で行えます。一応最後にeラーニングによる修了試験があり、7割以上の問題に正解することで合格となります。テキスト等を見てもよいので、ほとんどの方が合格します。
賃貸不動産経営管理士の登録手続き
①賃貸不動産経営管理士試験に合格して、登録要件を満たしている場合、賃貸不動産経営管理士の登録手続きを進めることができます。賃貸不動産経営管理士の資格登録は、インターネット上で行っていきます。まずは、「一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会」のホームページの「事前にご用意いただくもの(申請ページにて画像のアップロードが必要)」という部分をご覧いただき、「資格登録ページはこちら」から、登録を行っていきます。
初めにマイページを作成し、その後、内容に従って進めていきましょう。
登録料
6,600円(税込)
※クレジットカード払い、コンビニ払いがご利用いただけます。
※一度払い込まれた登録料は、理由の如何に関わらず返金できないので注意しましょう。
※登録料には、賃貸不動産経営管理士証の発行手数料4,500円(税込)を含みます。
事前に用意しておくもの(申請ページにて画像のアップロードが必要)
- 顔写真データ(登録申請日より6か月以内に撮影、jpg形式、サイズ上限5MB)
- 登録要件を証明する以下A・Bいずれかの書面データ(jpg形式、サイズ上限5MB)
A:管理業務に関し2年以上の実務の経験を有する事を証明する書類
賃貸住宅管理業務実務経験証明書をご用意ください
賃貸住宅管理業務実務経験証明書 [PDF形式]
賃貸住宅管理業務実務経験証明書(記入例) [PDF形式]
賃貸住宅管理業務実務経験証明書に関するよくある質問はこちら
B:賃貸住宅管理業務に関する実務講習の修了証
賃貸住宅管理業務に関する実務講習のお申込みはこちら
登録期限(いつまでに登録したらいいか?)
賃貸不動産経営管理士試験に合格した人は、合格自体、一生有効なので、いつまでに登録しなければならないという期限はありません。
ただし、合格してから1年以上経過してから賃貸不動産経営管理士の資格登録を受けようとする場合、資格登録の手続きの前に「賃貸不動産経営管理士登録講習」を受講する必要があります。
講習の詳細は、一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会「賃貸不動産経営管理士登録講習」をご確認ください。
受講料12,000円(税込)がかかり、6時間の講習で、最後の修了試験で7割以上の問題に正解する必要があります。そ内容としてはネット上で講習を受ける「e-ラーニング」形式です。講習中に勉強した内容が出題されるので、きちんと聞いていれば簡単です。しかし、講習中に寝てしまっていると解けない問題も多くなるので、講習中は寝ないようにして、先生が「重要」といった部分は必ず線を引いたり、ページ右上を折ったりして分かるようにしておきましょう。教材を見ながら修了試験は受けることができるので、その場で覚える必要はありません。
業務管理者として不動産管理会社で仕事をするのであれば、早めに資格登録の手続きを済ませましょう。
登録の有効期限
賃貸不動産経営管理士の登録の有効期間は、5年間です。5年を経過して、引き続き資格が必要な場合は、更新申請をして、更新します。更新手続きは、賃貸不動産経営管理士協議会の更新手続きのページから行いましょう。