給湯設備は、「配管」「弁」「給湯器」「貯湯タンク」などから構成されます。
給湯管は、以前は被覆銅管の使用が一般的であったが、近年は、架橋ポリエチレン管やポリブテン管等の耐熱性のある樹脂管が多く用いられるようになっています。
弁類は、鋳物製が多いです。
給湯機(器)は、ガス瞬間湯沸器や深夜電力利用の電気温水器、最近では高効率のヒートポンプ式給湯機(エコキュート)、家庭用燃料電池(エネファーム)が普及している。
公団アパートで普及していたバランス釜は、代替需要のほかは少なくなってきており、屋外設置型の高機能給湯機が普及しています。
給湯方式
給湯方式は、「飲用給湯方式」、「局所給湯方式」、「中央(セントラル)給湯方式」に分類されます。
飲用給湯方式
ガスや電気を熱源とする貯湯式給湯機を必要箇所に個別に設置する方式で、給湯機(器)に直接湯栓を付けた貯湯式給湯機を使用します。
【具体例】 例えば、キッチンで使用するために、キッチンの横や前に設置されている給湯機がこの飲用給湯方式です。また、配管で給湯栓に接続する場合、近接して設置し配管を短くする必要があります。開放型と密閉型があり、密閉型は流しの下部に給湯機を設置します。
局所給湯方式
給湯系統ごとに加熱装置を設けて給湯する方式で、近接した給湯器具に返湯管(返り湯管)を設けない一管式配管で給湯する方式です。各住戸や各室ごとに給湯機(器)を設置し、一か所で給湯して、台所流し、風呂場、洗面所などに配管でつないでお湯を送る方式です。
【具体例】 例えば、マンションの玄関横に設置されている「壁掛け式のガス給湯器」や、「深夜電力利用の電気温水器」です。最近は、住宅では、ヒートポンプ式給湯機や家庭用燃料電池を設置する例が多くなっています。
中央(セントラル)給湯方式
建物の屋上や地下の機械室に熱源機器(ポイラーなど)と貯湯タンクを設け、建物各所(全部屋)へ配管で供給する方式です。簡単に言えば、建物の一か所に給湯設備を設置し、そこから、建物全体を配管でつないでお湯を送る方式です。
【具体例】 例えば、ホテルや商業ビルなどの大きな建物に使用されるのがセントラル給湯方式です。この方式は、給湯配管が長くなるので湯温を維持するため、返湯管を設けて湯を循環させる2管式配管(給湯配管と返湯管)とし、循環ポンプを設置します。地域冷暖房地区のビルでは、熱交換器を熱源とした例もあります。
ガス給湯機
ガス給湯機は、ガスの燃焼によりお湯を沸かし供給する機器です。主に「飲用給湯方式」や「局所給湯方式」などの小規模な給湯設備として使用されています。また、複数台を連結して多量の湯を供給する機種もあり、ホテルや福祉施設、スポーツ施設や温浴施設など、中央給湯方式の熱源として用途が広がっています。そして、ガス給湯機は、機器の構造から「瞬間式」と「貯湯式」の2つがあります。
瞬間式給湯機
瞬間式給湯機は、給湯器内の熱交換器に通水し、ガスバーナーで加熱することにより機器に取り込んだ水を直ちに湯として供給する構造となっています。家庭用のガス給湯機では、配管で接続された栓(蛇口やシャワー)を開けると給水圧により給湯機内の熱交換器に水が流れ、これを流水センサーが感知し、ガスを燃焼させるためのファンが運転、点火装置が作動し、同時に制御弁が開きガスバーナーが着火、熱交換器内の水が加熱され湯として供給されます。
瞬間式給湯機の特徴
- 湯切れしない
- お湯の圧力が高い
- コンパクト
- 無駄にお湯を沸かさないため省エネ効果が高い
貯湯式給湯機
貯湯式給湯機は、貯湯部分をバーナーで加熱することにより、一定温度の湯を蓄えておき供給する構造となっています。貯湯タンク内の温度を温度センサー(サーモスタット)により検出し、ガスパーナーのON-OFFを行い、湯温を制御しています。
貯湯式給湯機の特徴
- 温度変化が少ない
- 低水圧でも使用できる
バランス釜
浴槽の横に給湯器が設置されているのが特徴の風呂釜で、給排気口がともに室外に出ているBF式をバランス釜といいます。
1965年にバランス釜が登場する前は、CF釜という浴室内の空気を使って燃焼し、それを外へ排出する方式だったため、排気が逆流によって一酸化炭素中毒事故が発生するおそれがありました。一方、バランス釜は、給排気が室外に出ていて、給気と排気のバランスがとれているので、一酸化炭素中毒の事故が起こる可能性が減少した。最近では屋外設置型のガス給湯機が普及し、バランス釜の新規設置は少ない。
- BF式
- 外の空気を吸い込んで、外に排気ガスを吐き出す方式
- CF式
- 室内の空気を吸い込んで、外に排気ガスを吐き出す方式で、一酸化炭素中毒事故が発生するおそれがあるため、新規設置することは、法的に認められていない。
ガス給湯機の表示
ガス給湯機の供給出湯能力は号数で表され、32号、24号、20号、16号、10号、10号以下に分かれています。表示の号は、現状の水温に25℃温かくしたお湯をプラスして出せる能力を示しています。
24号なら水温15℃の時、40℃(15+25)のお湯を1分間に24リットル供給できます。
器具と給湯個所数の関係としては、「16号の給湯器の場合、キッチンでお湯を使っていると同時にお風呂などで使えません」。目安として「20号なら2か所」、「24号なら3か所」まで同時に給湯できる能力があると考えられます。
ガス給湯機の注意点
ガス給湯機は、住戸やマンションでは外部に設置して、リモコン操作によりON-OFFを行う方式が普及しています。台所などの室内に設置する場合は、換気を行わないと不完全燃焼等により思わぬ事故を引き起こすことがあるので、お風呂にバランス釜や、台所にガス給湯機を設置した建物では、換気ファンや排気筒のつまりの有無など日常の点検が大切です。
電気給湯機
電気給湯機は、電気で水を温めてお湯を沸かす機器であり、ガス給湯機に比べ次に挙げる長所があります。
- 火気を使用しないため法定の換気設備を必要としない。
- 燃焼音がなく静かである。
- 不完全燃焼による事故の心配がない。
- 燃料配管が不要で、燃料漏れなどの危険がない。
一般に電気は、ガスや油に比べ熱量に対する単価が割高となるため、ランニングコストを抑えるために、単価の安い夜間電力を利用して湯を沸かし、昼間は貯めておいた湯を使用するものもあります。貯湯量が数リットルの小型のものから数百リットルのものまで有り、使用場所や使用する湯量、頻度などにより使い分けられます。
そして、電気給湯機には、「電気温水器」「ヒートポンプ給湯機(エコキュート)」「家庭用燃料電池(エネファーム)」といった種類があります。
電気温水器
電気温水器は、「貯湯タンク」と「電気ヒーター」および「制御機器」、「安全部品」などで構成されます。貯湯タンク内の電気ヒーターによりお湯を沸かし、貯めた湯を使用する構造の機器で、火を使用しないため火災の危険性が低く、燃焼による空気の汚染がありません。
小型のものは、湯沸室(給湯室のこと)や洗面所などの局所的に少量のお湯を使用したい場合に使用されています。
使用上の注意点として、下記が挙げられます。
- 湯切れ
- 長時間の貯湯による水質の悪化
- 水質による影響/strong>など
- 転倒防止
ヒートポンプ給湯機(エコキュート)
ヒートポンプ給湯機は、ヒートポンプの原理を利用し、大気から集めた熱を利用して湯を沸かす機器です。エネルギー効率の高い「ヒートポンプ」を利用することにより、これまでの電気給湯機と比べ大幅に少ない電力量で湯を沸かすことができるため、近年普及が進んでいます。
家庭用と業務用の機種があり、家庭用では、単身者向けの小容量のものから世帯向けまでそろい、浴槽の追い炊き機能を備えたものや、床暖房用の熱源を兼ねる機種もあります。
業務用では、出湯温度(貯湯温度)が65℃~70℃のフロン系冷媒によるものと、80℃~90℃の自然冷媒(CO₂冷媒)を使用したものがあります。
長所は、下記が挙げられます。
- エネルギー効率が高く、省エネルギーである。
- 火気を使用しないため、火災に対する安全性が高い。
一方、使用上の注意点としては下記が挙げられます。
- 湯切れ
- 剰運転、放熱などによるエネルギーロス
- 設置場所による運転効率のダウン
- 夜間運転における騒音への配慮
- 設置場所の確保
家庭用燃料電池(エネファーム)
家庭用燃料電池は、電気と同時に発生する熱を回収し、給湯に利用するシステムです。燃料電池は、「水素」と「酸素」を化学反応させて発電する機器で、水の電気分解の逆の作用を利用しています。石油や天然ガスなどを燃やして電気をつくる従来の発電システムとは異なり、化学反応を利用する発電効率の高いクリーンなシステムです。
燃料電池の発電の仕組み
- 燃料処理器で都市ガスから水素を取り出す。
- 燃料電池スタックで水素と空気中の酸素を使って直流の電気を作る。
- インバータで直流を交流の電気に変換して家庭の電気回路に送る。
- 熱交換器で発電と同時に発生した排熱を回収し、約60℃のお湯を作る。
- 貯湯タンクで作ったお湯を貯めておく。
- バックアップ熱源機で追い焚きや暖房で使うお湯を作る。貯湯内のお湯が足りないときも稼働する。