転貸とは
「転貸」とは、ある人から借りた土地や建物を他の人に貸すことです。いわゆる「又貸し」です。
【具体例】 例えば、建物の所有者A、建物の賃借人Bとします。建物賃借人Bが、借りた建物をC(転借人)に賃貸(転貸:てんたい)することを転貸と言います。転貸する場合、賃貸人Aの承諾が必要です。Bは、建物賃借人ですが、また、Cに転貸しているので、転貸人(てんたいにん)でもあります。Cは転借人(てんしゃくにん)と呼びます。
注意点
賃借人Bの義務
- 賃借人Bは直接使用していなくてもAに対して賃料を払う義務を負う。
- 賃貸借契約終了時には賃借物(建物)を返却する義務を負う。
- 転借人Cが故意または過失により転借物(建物)に傷を付けた場合、転貸人Bは損害賠償責任を負う。
転借人Bの義務
転借人Cは賃貸人Aに対して直接に義務を負います(民法613条1項)。つまり、賃貸人Aは、直接、転借人Cに対して、賃料を請求することができます。この場合、賃貸人Aは、賃貸料と転貸料の少ない方を転借人Cに請求できます。
【具体例】 例えば、AB間の賃貸料が10万円で、BC間の転貸量が12万円だった場合、賃貸人Aは転貸人Cに対して10万円を請求できます。そして、Aは、Cから10万円を受領したら、Bからは1円も受領することができません。一方、Cは、2万円をBに支払えばよいです。
注意点
サブリース
サブリース契約とは、基本的には転貸借契約なのですが、特定賃貸借契約に基づき賃借した賃貸住宅を第三者に転貸する契約を言います。そして、ここにおける転貸主を「特定転貸事業者」と言います。上図におけるAとCとの間には契約関係は生じないので注意しましょう!つまり、AはCに対して直接の義務を負わないので、建物の修繕が必要なときにも、転借人Cは賃貸人Aに対して修繕を求めることはできません(転貸人Bに対して修繕を求めることはできる)。一方、CはAに対して直接に義務を負うので、賃貸人Aは転借人Cに対して直接に賃料の支払いを請求することができます。
サプリース契約にも借地借家法の適用があります(最高裁平成15年10月21日判決、同平成15年10月23日判決)。そのため、転貸人Cは、賃貸人A及び転貸人Bに対して、賃料支払い義務、保管義務、保管義務違反による損害賠償義務、賃貸借が終了した場合の目的物返還義務などを負います。
賃貸借契約の終了と転貸借契約の終了の関係
賃貸借契約の終了と転貸借契約の終了の関係については、「1.期間満了or解約申入れ」「2.合意解除」「3.債務不履行による解除」の3つを頭に入れておきましょう。
賃貸借の終了原因 | 転貸借の終了時点 |
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期間満了または解約申入れにより終了 | 賃貸人Aから転借人Cへ通知した日から6ヵ月を経過したとき転貸借は終了。転借人Cには通知しなければならない。賃借人Bには通知不要。 |
賃貸借の合意解除 | 賃貸人Aは、転借人Cに対抗できない。転貸借契約は当然には終了しない。ただし、合意解除当時に、AがBの賃料滞納(債務不履行)を理由とする原賃貸借契約の解除権を有していたときは、Aは転借人Cに対して建物の明渡しを請求することはできます |
賃借人の債務不履行による解除(賃借人の賃料不払いなど) | 賃貸人Aが転借人Cに目的物の返還を請求したときに転貸借は終了。転借人Cは賃貸人Aに対抗できない。 そして、賃貸人Aは賃借人Bに催告するだけでよく、転借人Cに支払の機会を与える必要はない。 |
1.期間満了 or 解約申入れ
AB間の賃貸借契約について「期間満了」又は「解約申入れ」があった場合、BC間の転貸借契約は、当然には終了しません。ただし、賃貸人Aが転借人Cに対して「賃貸借契約が終了した旨」を通知したときは、通知から6ヶ月経過後に転貸借契約は終了します。
注意点
2.合意解除
AB間の賃貸借契約について、AB間で合意解除をした場合、賃貸人Aは転借人Cに対抗することができません。つまり、転借人Cは引き続き建物を使用し続けることができます。
3.債務不履行による解除
AB間の賃貸借契約について、賃借人BがAに対して賃料を滞納してしまい、解除となった場合、賃貸人Aが転借人Cに、建物の返還請求をしたときに、BC間の転貸借契約は終了します。この場合、賃貸人Aは、転借人Cに対して賃料支払いの機会を与える必要はありません。
注意点
原賃貸借契約終了時の地位の移転
AB間の原賃貸借契約において、「原賃貸借契約が終了した場合には、Aが転貸借契約を承継し、転貸借におけるBの地位を承継する」という特約は有効です。