清掃業務

清掃業務を実施するにあたっては、物件にあわせた作業仕様書を作成して計画的に作業し、作業終了後にはチェックリストに基づいて作業漏れがないか確認することが重要です。そして、清掃業務については「日常清掃業務」と「定期清掃業務」の2つに分けることができます。

日常清掃業務

日常清掃は、建物の共用部分の床の掃き・拭き清掃を中心として、管理員または清掃員が毎日あるいは週2~3回と定めて日常的に行う清掃です。

出入り口ホールや共用の階段廊下など、入居者などの歩行頻度が高い箇所は丁寧な清掃が求められます。また、天井や階段裏などは「くもの巣」が張りやすいので注意です。

日常清掃の担当者には、清掃をしながら外観点検の一部を行う役割もあります。劣化や不具合を発見した場合は、これを管理会社に伝える必要があります。

日常清掃の主な項目は、次のとおりです。

  • 出入り口ホール、廊下、階段床の掃き拭き
  • 出入り口ホールや階段室の共用部建具の拭き、ガラス・金属部清掃
  • 集合郵便受け箱の整理(とくに空室のチラシ)、拭き
  • 出入り口ホールやエレベーター乗降ホールの床マットの泥ぬぐいや洗浄
  • 敷地内および周辺のゴミ拾い
  • 共用部天井のくもの巣払い
  • 自転車の整頓と不要車の処分
  • 掲示板貼付物の整理
  • ゴミ置き場の整理
  • 除草
  • 灌水(かんすい):樹木に水を与えること

定期清掃業務

定期清掃は、1か月に1回または2か月に1回など、周期を定めて主に機械を使って行う清掃です。床のワックスがけやしみ抜きなど専門的な技術を要するので、多くの場合に清掃業者に外注されます。年末の共用部一斉清掃や台風シーズン前のドレイン(排水口)回りのゴミとりも、定期清掃業務です。定期的に計画性をもって実施するために、年間清掃計画と清掃仕様を作成しなければなりません。定期清掃業務の主な項目は、以下のとおりである。

  • 出入り口ホール、廊下、階段床のPタイル・長尺シートなどの機械洗浄
  • 上記のワックスがけ
  • 出入り口ホール、廊下、階段床のカーペットなどの洗浄やしみ抜き
  • 共用部ガラスのクリーニング

部位ごとの清掃方法

床洗浄

玄関、廊下、階段等の床は、月に1回または2か月に1回などの周期を定めてポリッシャーで洗浄します。ポリッシャーは、モーターで円形のブラシやパッドを回転させて効率良く床の洗浄や古いワックスの剥離作業、床の磨き作業を行なう清掃機械です。

床材がPタイル等の場合は、洗浄後ワックスを塗布します。ワックスを塗布することの目的は、床表面が艶やかに光り、見た目も美しく、歩行者の気持ちを爽快にすることである。もうひとつは、床面に運び込まれたほこりや細かい砂利から、床面が傷つかないように保護することです。人の出入りの激しい場所では、2度塗り3度塗りと層を厚くすることが望ましいです。「Pタイル」とは、プラスチック樹脂の床材です。

汚れがひどかったり、古いワックスが固まったりして洗剤では落ちない場合は、剥離剤を使用して下仕上げをする必要があります。

床面洗浄の順序は、まず、①箒(ほうき)でほこりやゴミを掃きとり②洗剤で軽く洗い③ポリッシャーで洗浄し、④洗剤を掻き取り⑤モップで水洗いし、⑥床面を乾燥させ、⑦ワックスを塗布する流れです。

洗剤は液体なので、床面に塗布すると床面が滑りやすくなることには注意しなければなりません。作業員が滑って転倒し、怪我をしないように気をつける必要があり、通行人が作業現場に侵入しないようロープを張ったり、監視員を立てたりして十分配慮しなければなりません。作業員以外は、床面の状況判断ができないので、万一滑って転倒すると大怪我をすることがあります。また、コンセントに洗剤をかけないようにしなければなりません。なぜならば、停電の原因になることがあるからです。

マンションの廊下や階段を洗浄するときは、通行人に水が飛んだり、玄関ドアの隙間から室内に洗浄水が入らないようにします。洗浄水が玄関に浸水して靴等履物を傷めたり、場合によっては下の部屋に漏水し、被害を与えることもあるので、作業には細心の注意が必要です。

カーペット洗浄

カーペットの洗浄では、材質を見極め、洗剤の使用に十分注意しなければなりません。誤った洗剤を使用したり、機械洗浄したりすると、カーペットの毛足を殺し、使い物にならなくしてしまうことがあります。また、シミ抜きも何によるシミなのか、原因を把握して、そのシミに合うシミ抜き剤を使用しないと、かえって汚してしまうことになりかねません。また、シミ抜きをするとき、こするようにするとシミを広げてしまうので、周りから包み込むようにして、軽く叩くようにして根気よくゆっくりとシミを抜いていく必要があります。

カーペットは、毛足が命であり、毛足を殺すような作業は厳禁です。カーペットの洗浄やシミ抜きは、専門家に任せたほうが無難です。

ガラスクリーニング

ガラスクリーニングは、住居の内側のガラスや入居者が清掃できる外側のガラスについては、入居者の責任・負担において行うべきであるが、エントランスホールの扉や窓、あるいは住居であっても、はめ殺しの窓(開けることができない窓)の外側や、高層マンションの窓の外側等は賃貸人の負担において行うことになります。

外壁での作業は、ゴンドラやロープにぶら下がる、いわゆるプランコによって作業するが、高所作業なので命綱等を準備し、安全性に十分配慮しなければなりません。もし、転落でもすることがあれば、死亡事故につながります。また、道路に面して作業することが多いので、通行人に危害を加えないようにバリケード等を設置し、誘導員を配置する等、第三者に対する安全性にも十分気をつけなければなりません。洗剤を使用するので、洗剤が飛び散って第三者に迷惑をかけないように作業をする必要があります。

特別清掃等

排水管高圧洗浄

特定建築物半年に1回、排水管の清掃を実施することが義務づけられている。特定建築物以外のマンションなどでも排水管清掃は定期的に行われています。

特定建築物」とは、興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、学校(研修所を含む)又は旅館の用途に供される建築物で、その用途部分の延べ面積が3,000㎡以上であるものをいいます。

建物に特有の清掃

それぞれの建物に特別に必要な部分について専門家による清掃が必要となることもあります。高所、埋め込みの照明器具、ガラス、目隠し板、屋上の水洗い・掃き拭き、除塵や、消防設備、空調・換気設備、メーターボックスなどの拭き、フィルター清掃などです。必要に応じて、特別清掃として定期的に実施しなければなりません。

入居者退去後の次の入居者を募集するためのハウスクリーニング

賃貸借契約が終了して入居者が退去し、次の入居者が決まるまでの間に、室内の清掃が必要です。退去者も退室時に掃除していくが、新たな入居者のためには、賃貸人も改めて清掃を行う必要があることも多いです。

台所、浴室、便所等の水回りは食べ物を扱ったり、肌が触れるところなので、少しでも汚れていると次の入居者の心象を悪くする原因となります。後から使う人は汚れが残っていると気になるものです。

台所は、流し台の排水口のなかを忘れないようにします。食材の残りや目皿やくずかご等の「ぬめり」は取り除かなければなりません。また、コンロの脇の壁は、調理の油が飛び散っているので、油の除去を忘れないようにします。

浴室は、カビが発生しやすいので、コーキングや目地のカビの除去、浴槽の湯垢の除去、排水口の目皿の髪の毛等の除去をします。また、天井の換気扇も洗浄します。ユニットバスの場合、鏡が劣化しやすいのでひどいときは交換が必要です。

トイレは、タンクからの水の流出状況を確認し、場合によっては排水バルプ等を交換します。

また、便器の裏側の汚れは、放置すると後から汚れが流れ出てくるので、掃除しておかなければなりません。

エアコンの内部やフィルターの洗浄、台所や便所の換気扇の洗浄、排水口の洗浄等も欠かせません。

清掃計画と清掃作業の周知

共用部分の清掃については、年間の清掃計画と定期点検計画(全館停電やエレベーター点検)を入居者に事前に知らせることは、管理業者の重要な役割です。

入居者への事前連絡としては、掲示板の活用・回覧・文書配布等による周知を行います。

作業当日は、幼児や高齢者の安全が図られるよう、作業中の標示板やバリケードの設置の位置が適切か注意を払います。外注作業者が道路を占有する場合(排水管の高圧洗浄等)は、道路占有許可を申請し、ガードマン(交通誘導員)の配置が適切か確認します。

害虫や小動物の駆除その他

ネズミや害虫は、数々の疫病を媒介するおそれがあるので、必要に応じて捕殺や薬殺を実施します。これらの駆除は、特殊な業務であるため、専門業者に外注される場合が多いです。ネズミ類の防除は、侵入口の防止措置と巣を作らせないことや餌となるものを置かないことが基本の方策です。害虫類の駆除は、建物全館一斉の薬剤散布を行います。とくに、延べ床面積が3,000㎡以上の「特定建築物」は「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」第4条により、ネズミや害虫の防除が義務づけられています。

また、鳩は、ベランダに住みついて糞で建物を汚したり、洗濯物を汚したりします。人によっては、喘息等の原因にもなり得ます。鳩対策には、餌を与えないことが効果的です。ベランダの室外機の裏側や室外の換気口にも巣を作ることがあるので、ベランダを掃除するときに注意することが必要です。

シロアリは、建物の柱等に侵食し、建物を破壊する。放置された残材や木屑(きくず)を餌とし、湿気のあるところを好むので、そのような状況を作らないように留意しなければなりません。

これらの害虫や小動物からの被害を防ぐためには、環境を整備し、清潔さを保ち、害虫や小動物が寄りつかない状態を作る必要があります。

害虫や小動物が住みついたら、これらの駆除は素人では難しいので、捕殺・薬殺等必要に応じて専門業者に依頼するのがよいです。

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