用語の解説
- 低圧
- 標準電圧100ボルトまたは200ボルトをいう。
- 高圧
- 標準電圧6,000ボルトをいう。
- 従量電灯B
- 主に一般の家庭で電気を使用するお客さま向けのプラン。 契約電流は、使う電気機器の容量や使い方にあわせて、10アンペア(A)、15A、20A、30A、40A、50A、60Aの中から選ぶ。
- 柱上トランス
- 柱上変圧器(ちゅうじょうへんあつき)とも呼ばれ、配電用変電所から送られてくる6,600ボルトの電気を100ボルト・200ボルトの電圧に変える装置。
- 対地電圧
- 地面との間の電圧のこと。
- 単相3線式
- 3本の電線のうち真ん中の中性線と上または下の電圧線を利用すれば100ボルト、中性線以外の上と下の電圧線を利用すれば200ボルトが利用できます。
- 単相2線式
- 電圧線と中性線の2本の線を利用するので、100ボルトしか使用することができません。
- ワット(W)
- 実際に消費される1秒間当たりの電気エネルギー(消費電力)で、アンペア(A)×ボルト(V)で計算できる。
- 電灯
- 白熱電球、蛍光灯、ネオン管灯、水銀灯等の照明電気機器(付属装置を含む)をいう。
- 小型機器
- 主として、住宅、店舗、事務所において単相で使用される電灯以外の低圧の電気機器をいう。ただし、急激な電圧の変動等により他のお客さまの電灯の使用を妨害し、または妨害するおそれがあり、電灯と併用できないものは除く。
単相3線式100ボルト/200ボルト
各住戸に供給される電力には2つの方式があり、「単相3線式100ボルト/200ボルト」、または「単相2線式100ボルト」で電気が供給されています。
「単相3線式」は、3本の電線のうち真ん中の中性線と上または下の電圧線を利用すれば100ボルト、中性線以外の上と下の電圧線を利用すれば200ボルトが利用できるという方式です。
単相2線式100ボルト
「単相2線式」は、電圧線と中性線の2本の線を利用する方式であるため、「単相3線式」の方式とは異なり、100ボルトしか使用することができません。そのため「単相2線式」で電力が供給されている住戸では200ボルト電力が必要となる家電製品等は使用できないことに注意する必要があります。
受電方式・引込みの種別
受電方式には、低圧受電、高圧受電、特別高圧受電などの種類があり、電力会社の契約約款等に定められています。
低圧受電(低圧引込み)
低圧受電とは、標準電圧100ボルトまたは200ボルトで、住戸・アパート・事務所などの電灯や小型機器で使用する電気を供給する場合をいいます。
電力会社の配電柱の柱上トランスで高圧6,000ボルトから「単相3線式100ボルト/200ボルト」、または「三相3線式200ボルト」に落とし、建物に低圧電灯線や低圧動力線で引き込む場合を低圧引込みといいます。
電灯設備の需要が多い住戸やアパートでは、屋内で使用できる電気機器は、対地電圧150ボルト以下の制約があるが、エアコンやエコキュートなどで200ボルトを使用する機器を屋外設置とし、従量電灯Bとして契約している場合が多いです。
※「三相3線式」は覚えなくても大丈夫です。
また、事務所などで動力の需要が多いが、電灯と動力を合わせて契約電力が50キロワット未満の場合は、低圧電灯(単相2線式100ボルト)、低圧電力(三相3線式200ボルト)として契約しています。いずれの場合も契約電力が50キロワット以上の場合、変圧器等を施設する「借室」が必要となります。
高圧受電(高圧引込み)
高圧受電とは、標準電圧6,000ボルトで、大規模な建物などの照明コンセントや給排水ポンプや空調機器などの動力設備で使用する電気を供給する場合をいい、建物の受変電設備に高圧で引込む場合を高圧引込みといい、高圧受変電室が必要となります。
契約電力が50キロワット以上2,000キロワット未満の場合が対象で、事務所・アパートなど電灯と動力をあわせて使用する場合は、業務用電力契約となり、工場など動力を主体として使用する場合は、高圧電力契約となります。
受変電設備は、自家用電気工作物となり主任技術者の選任が必要となります。
特別高圧受電(特別高圧引込み)
特別高圧受電とは、受電電圧が2万ボルト、6万ボルト、14万ボルトで、契約電力が2,000キロワット以上の場合が対象となります。
大規模な事務所・複合施設などで、電灯もしくは小型機器と動力を合わせて使用する場合は、「特別高圧電力A」となり、工場などで動力(付帯電灯を含む)を使用する場合は、「特別高圧電力B」契約となります。特別高圧受変電室ならびに高圧受変電室が必要となります。
受変電設備は、自家用電気工作物となり主任技術者の選任が必要となります。
共同住宅の低圧引込み
共同住宅では、照明・コンセントやエアコンなどの小型機器が多いです。
従量電灯B契約で単相2線式の場合は、100ボルトのみの供給となり、200ボルトの小型機器が使用できない場合があるので注意が必要です。
また、建物全体で契約電力が50キロワットを超えた場合、電力会社が使用する電気室(「借室」という)に変圧器等の供給施設を設ける場合があります。この場合、単相3線式100ボルト/200ボルトの低圧電灯線とするのが望ましいです。
共同住宅の高圧引込み
ある規模以上の共同住宅で、各住戸と共用部分の契約電力の総量が50キロワット以上のときは、6,000ボルトの高圧引込みとなり、受变電設備を設置する必要があります。
このような場合は、構内や建物屋上などに、高圧受変電設備(キュービクル)を設置し、キュービクル内の変圧器で単相3線式100/200ボルトに変圧して小型機器に供給します。また、共用で使用する動力負荷には、三相3線式200ボルトに変圧して供給します。よって、高圧引込みの場合でも、各住戸の契約は、従量電灯Bです。
供給施設の設置
1つの需要場所において従量電灯と合わせて契約する場合で、「契約電流または契約容量」と「契約電力」との合計が50キロワット以上である場合は、需要者の土地または建物に変圧器等の供給施設を設置することがあります。
供給施設の方式は、「借柱方式」「集合住宅用変圧器方式」「供給用変圧器室方式」「供給用変圧器棟方式」「キュービクル方式」のいずれかによります。50キロワット以上の場合、変圧器の2次側接続点までが電力会社の管理対象です。
借柱方式(柱上変圧器方式)
電柱上に変圧器を設置して供給する方式(電柱は需要者の設置による)です。
集合住宅用変圧器方式(パットマウント方式)
敷地内の屋外に、地上用変圧器を設置して供給する方式。1戸当たり50A契約で、最大100戸くらいまで供給できます。
借室方式
建物内の一室を変圧器室として、電力会社へ提供(借室)する方式です。借室と受変電設備は、電力会社の管理対象です。中規模マンションに多く採用されています。
借棟方式
敷地内に変圧器棟を設置する方式で、団地などに採用されています。
キュービクル方式
敷地内の屋外に設置される方式で中小規模の建築物に設置されます。設置場所も小さく、保守点検作業が容易です。
電気設備の維持管理
照明設備の維持管理
建物の廊下や階段が外部に開放されている場合、廊下の天井灯や階段室の照明は、照明器具の取付け部から雨水が侵入し、湿気が入り込むことで器具の配線接続部の絶縁不良による故障や漏電が経年とともに増加し、接続金具の錆による劣化で器具部品の落下する危険性が生じます。
また、電線を被覆しているビニールも熱や紫外線の影響により経年劣化し、絶縁抵抗が弱まるため、定期的な抵抗測定により、配線を交換する必要があります。
一般的に、電灯類はスイッチの入り切りにより点灯消灯するが、開放廊下の天井灯や階段室の照明等は、光センサー、人感センサー、照度センサーによる自動点滅器やタイマーを設置し、自動的に点灯消灯するようにしている場合もあります。点灯時間をタイマーで制御している場合、季節による日照時間の変化に応じてタイマーの点灯時間を調整する必要があります。
建物の停電
一時的に過電流が流れ、遮断器が落ちて停電することがあります。その場合は、分電盤を調べ、遮断器が落ちている回路を再び通電させて様子を見るべきです。再度停電するようならその回路を切って専門業者へ連絡して速やかに原因究明と修理を行う必要があります。
住戸内の停電
住戸内のプレーカーが落ちたため、住戸内の停電が発生することがあります。住戸内には電力会社と契約した契約アンペアを示す「アンペアブレーカー(一部の電力会社では設置されない)」の他に、ELB(Earth Leakage Breaker:「漏電遮断機」「漏電ブレーカー」ともいう)が設置されており、これらのブレーカーにその容量を上回る電力が流れた場合にブレーカーが落ちて電気が遮断され停電がおこります。
入居者が一時的に数個の家電製品を使用したことによりブレーカーが落ちることもあるが、漏電などが原因となっていることもあるので、注意が必要です。
なお、ブレーカーは、単相3線式では、片方の電圧線と中性線の負荷が一定値を超えると電気を遮断する仕組みになっているため、契約アンペア未満でも遮断されます。
※ELBとは、漏電遮断器(漏電ブレーカー)のことで、電気配線や電気製品のいたみや故障により、電気が漏れているのを素早く察知して回路を遮断し、感電や火災を防ぎます。
地震による火災発生の防止(感震ブレーカーの採用)
感震ブレーカーとは
地震による火災の多くは電気が原因と言われています。そして、感震ブレーカーは、地震発生時に設定値以上の揺れを検知したときに、プレーカーやコンセントなどの電気を自動的に止める器具です。感震ブレーカーを設置することで、不在時やブレーカーを切って避難する余裕のない場合に電気火災を防止することができます。
既設分電盤の対応
感震ブレーカーの種類は、分電盤内蔵型や、分電盤後付型があります。また、コンセントなどに取り付けるコンセントタイプもあります。
既設の分電盤に漏電ブレーカーが設置されている場合は、分電盤後付型を採用できます。漏電ブレーカーが設置されていない場合は、内蔵型に取り替える必要があります。
また、夜間の照明確保や停電時に作動する足元灯などの照明器具を常備することを推奨しています。
ELB(アース・リーク・ブレーカー)
ELB(アース・リーク・ブレーカー)とは、漏電遮断器(漏電ブレーカー)のことで、電気の漏れを検知して、電流を遮断し、感電や火災を防ぐ役割を持っています。
「アース」とは、電気設備機器や電路などと地面を電気的に接続することです。アースによって、地球と導体(回路)の間に電気の通り道ができ、静電気を放電することができます。家電製品にはアース線が配線されていることが多く、これは、電気事故や感電防止のためにあります。
「リーク(漏れ)」とは、電気回路で電気が導体(回路)から漏れ出すことを指します。この電気の漏れが人体に触れると、感電や火災の危険があります。
そこで、「ブレーカー(遮断器)」が登場します。ブレーカーは、電気回路に異常が生じたときに電気の流れを遮断し、安全を確保します。例えば、電気製品に異常が起きて電気が漏れ出した場合、ブレーカーは電気の流れを自動的に遮断してくれます。