下水道のない地域では、「し尿浄化槽」を設けて汚水を浄化し、河川等に放流しなければならないため(建築基準法第31条第2項)、浄化槽設備が設置されます。
浄化槽は、汚水や雑排水を溜めて、微生物に汚物等を分解させ、固形物を沈殿させることにより、上澄みのきれいになった水を放流する仕組みです。固形物が汚泥となって、槽の底部に堆積します。清掃するときは、この汚泥の引抜きが必要です。
浄化槽の管理について権限を有する者には、その保守点検や清掃を行うことが義務づけられていますが、それぞれの専門業者に委託することができます。
合併処理浄化槽と単独処理浄化槽
浄化槽には、合併処理浄化槽と単独処理浄化槽の2つがあります。
- 合併処理浄化槽
- 生活排水とし尿の両方を処理する
- 単独処理浄化槽
- し尿のみを処理する
2001(平成13)年4月に浄化槽法が改正され、それ以降に設置された浄化槽は、すべて「合併処理方式」となりました。
浄化槽の清掃・点検・検査
浄化槽管理者は、最初の保守点検を浄化槽の使用開始直前に行うものとし、以後は、浄化槽の清掃を、全ぱっ気方式の浄化槽にあってはおおむね6か月ごとに1回以上、その他の浄化槽にあっては年1回以上行わなければなりません(浄化槽法第8条~第10条、同法施行規則第6条、第7条、第9条)。
また、浄化槽管理者は、毎年1回(浄化槽法施行規則に定める浄化槽については、同施行規則で定める回数)、指定検査機関の行う水質に関する検査を受けなければなりません(浄化槽法第11条、同法施行規則第4条)。
報告書届出義務
浄化槽管理者は、当該浄化槽の使用開始の日から30日以内に、環境省令で定める事項を記載した報告書を都道府県知事に提出しなければなりません(同法第10条の2第1項、同法施行規則第8条の2第1項)。
浄化槽の種類と仕組み
浄化槽は、「嫌気ろ床接触ばっ気方式」「生物ろ過方式」等があります。いずれも、放流水質は、BOD20mg/ℓ以下で利用されます。
※BODとは、水の汚れの程度を表す指標で、生物化学的酸素要求量と言います。
嫌気ろ床接触ばっ気方式
「嫌気ろ床」は「けんきろしょう」と読みます。国土交通大臣が定めた構造基準による処理方式で、これまでにもっとも多く設置されています。
「嫌気ろ床槽」は、通常、排水中の浮遊物・固形物を沈殿させ、分離するとともに、嫌気性微生物(酸素を嫌う微生物)により、排水中の汚濁物質の一部を分解します。メーカーにより異なりますが、様々な形状のろ材に微生物を付着させ、処理効果を高めています。
生物ろ過方式
生物ろ過法は、「担体に付着した生物膜による生物酸化」と「物理ろ過」を同時に行う方式です。メーカーが独自に開発し、国土交通大臣の認定を受けた方式で、嫌気ろ床接触ばっ気方式に比べ、容量が60~80%とコンパクトになっています。