使用貸借

使用貸借契約の成立

使用貸借契約は、無償(無料)で他人の物を使用する(借りる)契約です。そして、物を引き渡さなかったとしても、契約締結するだけで、使用貸借契約は成立します。

貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができます。ただし、書面によって使用貸借契約を締結した場合は、貸主から契約解除はできません(民法593条の2)。

【具体例】 例えば、この建物を1か月間だけ無料で貸してあげるよ!と言って契約をすれば、使用貸借契約は成立します。そのため、もし、貸主が建物の鍵を渡してくれない場合、契約したのだから鍵を引き渡してください!と請求できます。ただし、契約が口頭の場合、建物の引渡し前であれば、貸主は「やっぱり無料で貸すのはやめた!」と契約解除ができます。

使用貸借の貸主と借主の義務

具体的には、使用貸借は、貸主がある物を引き渡すことを約束し、借主がその受け取った物について無償で使用および収益をして、借主は、契約が終了したときにその物を返還をすることを約束することによって、使用貸借の効力が生じます(民法593条)。

借主の義務

用法に従った使用収益義務

借主は、契約又はその目的物の用法に従いその物の使用および収益をしなければなりません。
また、借主は、承諾を得なければ第三者に借用物の使用または収益をさせることができません

もし、借主が定まった用法に従った使用および収益をせず、または、貸主の承諾を得ずに第三者に借用物の使用または収益をさせた場合には、貸主は、契約の解除をすることができます(民法第594条)。

必要費の負担義務

借主は、借用物の通常の必要費を負担します。必要費とは、物の価値を維持するための費用で、例えば、屋根が壊れた場合の屋根の修繕費用や、水道管に水漏れがあった場合の修理費用が必要費です。

貸主の義務

有益費の償還義務

借主が不動産について有益費を支出したときは、その価格の増加が現存する場合に限り、貸主の選択に従い、その支出した金額または増価額を償還しなければなりません(民法595条)。

【具体例】 有益費とは、物の価値を高めるための費用です。例えば、床暖房の設置費用が有益費用です。そして、床暖房の設置費用に20万円(支出額)かかり借主が負担したとします。建物を明け渡すときに、床暖房の価値が15万円(増加額)だった場合(=価格の増加が現存する場合)、貸主は、20万円と15万円の好きな方を選んで、借主に返せばよいです。普通は安い方15万円を選ぶので、15万円を貸主に返還します。

そして、借主は、貸主が返還を受けた時から1年以内に上記有益費の償還請求をしなければならず、1念を過ぎると、時効により、請求できなくなります(民法600条1項)。

使用貸借の終了および解除

借主死亡による終了

借主が死亡すれば、使用貸借は終了します(民法597条3項)。

注意点

貸主が死亡しても当然には(自働的には)使用貸借は終了しない

使用貸借の期間を定めた場合

当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が終了することによって終了します(民法597条1項)。そして、使用貸借には借家法は適用されず、更新することはありません。

使用貸借の期間を定めなかった場合

もし、当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用および収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用および収益を終えることによって終了します(民法597条2項)。

貸主からの解除

上記の「使用貸借の期間を定めなかった場合」と関連するのですが、使用貸借の期間を定めず使用および収益の目的を定めた場合、その目的に従い借主が使用および収益をするのに足りる間を経過したとき、貸主は、契約の解除をすることができます(民法598条1項)。

当事者が使用貸借の期間も使用および収益の目的も定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができます(民法598条2項)。

借主からの解除

借主は、いつでも契約の解除をすることができます(民法598条3項)。

借主による収去等

借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する(取り外す)義務を負います。ただし、借用物から分離することができない物または分離するのに過分の費用を要する物については、取り外しは不要です(民法599条1項)。

【具体例】例えば、エアコンを取り付けたのであれば、取り外しは可能なので、使用貸借が終了した時に取り外さないといけません。一方、床暖房を設置した場合、取り外すのに相当の費用がかかります。そのため、取り外しは不要で、上記でも解説した通り、借主は、貸主に対して有益費償還請求をして、お金を一部もらえます。

また、借主は、借用物を受け取った後に附属させた(取り付けた)物を収去することができます(民法599条2項)。つまり、上記、借主の負担で、床暖房を取り外しても構いません。

そして、借主が借りた物を受け取った後に、損傷を加えてしまった場合、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に回復させる義務(原状回復義務)を負います。ただし、その損傷が借主の責任でない事由によるものであるとき(例えば、地震で壁にひびが入ったなど)は、原状回復義務はないので、借主は修繕費用を負担しなくてもよいです(民法599条3項)。

目的物を取得した第三者との関係

使用貸借における借主の権利は、貸主に対して主張できるだけです。もし、貸主が目的物を第三者に譲渡(売却)した場合、借主は、借主の権利を譲受人(買主)に対抗することはできません。つまり、買主から借りているもの(例えば建物)を返して!と請求されたら、返さないといけません。

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