【比較表】定期借家契約と普通借家契約の違い
定期建物賃貸借契約と普通建物賃貸借契約は、主に更新の有無と賃料減額特約の扱いが異なります。以下の表で主要な違いを確認しましょう。
| 比較項目 | 定期借家契約 | 普通借家契約 |
|---|---|---|
| 契約の更新 | なし(期間満了で終了) | あり(正当事由がなければ拒絶不可) |
| 契約方法 | 書面が必要(公正証書でなくてもよい) | 書面でも口頭でも可 |
| 事前説明 | 更新がない旨の書面交付・説明が必要 | 不要 |
| 契約期間 | 制限なし(1年未満も可) | 1年未満の定めは期間の定めのない契約とみなされる |
| 不減額特約 | 有効 | 無効(賃借人に不利なため) |
| 不増額特約 | 有効 | 有効 |
| 賃借人からの中途解約 | 居住用・200㎡未満・やむを得ない事情の3要件を満たせば可能 | 期間の定めがなければ申入れ可能 |
このように両者は仕組みが大きく異なります。以下で各項目の詳細と試験で問われるポイントを解説していきます。
定期建物賃貸借契約とは
定期建物賃貸借契約とは、「定期借家契約」とも言い、更新がない賃貸借です。そして、期間満了により、契約は終了し、更新はありません。そのため、たとえ「更新をする合意」をしても、更新はしません。そして、普通建物賃貸借契約との違いについては、上記「更新がないこと」と「賃料の減額を認めない特約が有効になること」の2つです。
注意点
定期建物賃貸借契約の成立要件
定期建物賃貸借契約が成立するには、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 期間を定めること
期間の始期と終期(いつからいつまでか)を定めることが必要です。 - 更新がない旨を定めること
期間の満了によって契約が終了し、更新されることがないとの定めが必要です。更新否定条項は、契約書において一義的に明示されていなければなりません。 - 書面により契約すること
書面によらない契約は、更新がない定期建物賃貸借としての効力は認められませんず、普通建物賃貸借契約となります。そして、「書面」は、公正証書でなくても良いです。 - 事前説明をすること
あらかじめ、更新がないことを書面(説明書面)を交付して説明することが必要です。そして、説明書面は、契約書とは別個独立の書面であることが必要です。
普通建物賃貸借から定期建物賃貸借への切り替え
賃貸人と賃借人の合意により、普通建物賃貸借(定期建物賃貸借ではない建物賃貸借。)は、定期建物賃貸借に切り替えることができます。ただし、2000年(平成12年)3月1日より前に締結されていた居住用建物の普通建物賃貸借契約については、合意があったとしても、普通建物賃貸借を終了させて、新たに定期建物賃貸借契約を締結することはできません。一方、事業用の普通建物賃貸借であれば、普通建物賃貸借から定期建物賃貸借への切替えは可能です。
増額しない旨の特約・減額しない旨の特約
定期建物賃貸借において、不増額特約(賃料増額請求をしない特約)、不減額特約(賃料減額請求をしない特約)がある場合には、この特約はどちらも有効です。
一方、普通建物賃貸借では、不増額特約は、賃借人にとって有利な特約なので有効ですが、不減額特約は、賃借人にとって不利な特約なので無効となります。
注意点
居住用建物の解約申入れ
居住用建物の定期建物賃貸借の場合、賃借人からの解約申入れが認められています(借地借家法38条7項)。この解約申し入れには下記要件をすべて満たす必要があります。
- 居住用であること
- 床面積が200㎡未満であること
- 転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったこと
そして、建物の賃借人が解約の申入れをした場合、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1か月を経過することによって終了します(借地借家法38条第7項後段)。
居住用建物の解約申入れに関しては、賃借人に有利な特約は有効だが、賃借人に不利な特約は無効となります(借地借家法38条8項)。例えば、「居住用建物の賃借人は、転勤などのやむを得ない事情があっても解約の申入れはできない」旨の特約をした場合、当該特約は無効となります。
終了通知
期間が1年以上の場合
定期建物賃貸借の期間が1年以上の場合、賃貸人は、期間満了の1年前から6か月前までの間(通知期間)に、賃借人に対し、期間満了により賃貸借が終了する旨の通知(終了通知)をしなければなりません(借地借家法38条6項本文)。この終了通知の目的は、賃借人が代わりの物件を探すためなどに必要な期間を確保することです(東京地判平21.3.19)。終了通知は、書面でなく、口頭でもよいです。
終了通知をしなかった場合
賃貸人が終了通知をしなかった場合は、賃借人に対して賃貸借の終了を対抗できません。しかし、通知期間の経過後に通知をしたときには、その通知が到達した日から6か月を経過すれば、賃貸借契約の終了を対抗できます(借地借家法38条第6項ただし書き)。
期間が1年未満の場合
定期建物賃貸借の期間が1年未満である場合、通知は必要ありません。通知がなかったとしても、期間が満了すれば自動的に契約終了となります。
注意点
事前説明・1年未満の契約・再契約の実務ポイント
定期建物賃貸借契約では、成立要件や期間満了後の手続きについて、実務上よく問われるポイントがあります。ここでは、事前説明の具体的な方法、契約期間が1年未満の場合の取扱い、再契約の仕組みについて整理します。
事前説明の具体的な方法と説明義務違反の効果
定期建物賃貸借契約の事前説明とは、賃貸人が賃借人に対し、「この契約は更新がなく、期間満了により終了する」旨を記載した書面(説明書面)を交付して説明することです(借地借家法38条3項)。この説明書面は契約書とは別個独立の書面でなければなりません。
事前説明について、特に注意すべき点は以下のとおりです。
- 説明の主体:賃貸人自身が行うのが原則です。賃貸人の代理人(宅建業者等)が行うことも可能ですが、単に書面を渡すだけでは足りず、内容を口頭で説明する必要があります。
- 説明義務違反の効果:事前説明を怠った場合、「更新がない」旨の定めは無効となります。その結果、契約自体は有効ですが、普通建物賃貸借契約として扱われ、更新が認められることになります。
契約期間が1年未満の場合の取扱い
普通建物賃貸借契約では、1年未満の期間を定めた場合、期間の定めがない建物賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。一方、定期建物賃貸借契約では、1年未満の期間も有効です。たとえば「6か月間」や「3か月間」といった短期の契約も問題なく成立します。
また、契約期間が1年以上の定期建物賃貸借では、期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃貸人は賃借人に対して期間満了により契約が終了する旨の通知をしなければなりません(借地借家法38条6項)。しかし、1年未満の契約ではこの通知は不要です。
期間満了後の再契約について
定期建物賃貸借契約は更新がないため、期間満了後も引き続き同じ建物に住み続けたい場合は、新たに契約を締結し直す「再契約」が必要です。再契約は従前の契約とは別個の新しい契約であるため、改めて成立要件(書面による契約・事前説明等)をすべて満たす必要があります。
なお、再契約の際には賃料や契約条件を変更することも可能です。賃貸人・賃借人双方の合意があれば、従前と同一条件で再契約することもできますし、異なる条件で締結することもできます。
再契約
定期建物賃貸借は期間満了によって確定的に終了し、更新はありません。そのため、質貸借が終了した後も賃借人が引き続き建物を使用するためには、新たな契約(再契約)の締結が必要となります。
再契約は新たな賃貸借なので、再契約を従来の賃貸借と同様に定期建物賃貸借とする場合には、書面を交付した上で説明、および書面による契約が必要になります。
また、当事者の一方が契約終了後の建物の使用を望んでも、他方がこれを了承しなければ、再契約は成立しません。つまり、再契約の拒否も違法とはなりません(東京地判平22.3.29)。
再契約後の賃貸借は、従前の賃貸借とは、別のものです。そのため、敷金や保証金は当然には引き継がれず、従前の保証人は、従前の賃貸借契約が終了した時点で、保証人ではなくなります。もし、同じ人に保証人になってもらう場合は、再契約後、新たに書面を作成して保証契約を締結する必要があります。
再契約における報酬
再契約の代理・媒介は、新たな契約なので、宅建業法の重要事項説明が必要です。また、両当事者から合計で賃料の1.1か月分(消費税相当分を含む)を上限として、再度、報酬(仲介手数料)を請求・受領することは許されます。

