終身建物賃貸借(終身借家)契約
サービス付き高齢者住宅の登録制度
高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)は、高齢者の円滑な入居を促進するための賃貸住宅の登録制度を設けています。
高齢者向けの賃貸住宅または有料老人ホームに高齢者を入居させ、高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスを提供する事業(サービス付き高齢者向け住宅事業)を行う者は、建築物ごとに、都道府県知事の登録を受けることができます(高齢者住まい法5条1項)。
注意点
終身建物賃貸借の賃貸人と賃借人
高齢者住まい法は、「終身賃貸事業者が、都道府県知事の認可を受けて住宅を賃貸する事業を行う」という制度を設けています。この場合の賃貸借契約は、「賃貸人は、終身賃貸事業者」「賃借人は、高齢者または同居するその配偶者や親族」です(高齢者住まい法52条)。
終身建物賃貸借における賃借人は、高齢者ですが、具体的には、「60歳以上の者」です。配偶者や親族については、60歳以上でなくても大丈夫です(高齢者住まい法52条)。
そして、賃貸住宅はバリアフリー化基準を満たしたものでなければなりません(高齢者住まい法54条)。
終身建物賃貸借の存続期間・契約期間
終身賃貸事業者が賃借人との間で締結する終身建物賃貸借の存続期間(契約期間)は、賃借人の死亡するまで存続し、かつ、賃借人が死亡した時に終了します(高齢者住まい法54条2号)。
終身賃貸借契約の成立・内容
終身賃貸借契約のポイントは下記の通りです。
- 契約は、公正証書等の書面(電磁的記録でもよい)によって行わなければならない(高齢者住まい法52条)。
- 契約は、賃借人が死亡するまで存続し、かつ、賃借人が死亡した時に終了する(高齢者住まい法54条2項)。
- 賃借人が死亡したときは、「同居していた配偶者または60歳以上の親族(同居配偶者等)」が、賃借人の死亡があったことを知った日から1月を経過する日までの間に、賃貸人に対し、引き続き認可住宅に居住する旨の申出を行った場合には、賃貸人は、その同居配偶者等と終身建物賃貸借の契約(新規の終身賃貸借契約)をしなければならない(高齢者住まい法62条第1項)。その場合の建物の賃貸借の条件は、従前の建物の賃貸借と同一のものとなる(高齢者住まい法62条3項)。
- 賃料について「増額請求できない特約」「減額できない特約」ともに有効。
- 入居一時金は、受領しない契約にしなければならない。=入居一時金を高齢者から取ってはいけない
注意点
終身賃貸借契約の終了
賃貸人からの解約の申入れ
賃貸人は、下記2つのいずれかに該当するとき、都道府県知事の承認を受けて、賃貸借の解約の申入れをすることができます。
- 認可住宅の老朽、損傷、一部の滅失その他の事由により、認可住宅を維持し、または賃貸住宅に回復するのに過分の費用が必要となったとき
- 賃借人が認可住宅に長期間にわたって居住せず、かつ、当面居住する見込みがないことにより、認可住宅を適正に管理することが困難となったとき
賃借人からの解約の申入れ
賃借人は、下記3つのいずれかに該当するとき、賃貸借の解約の申入れをすることができます。
- 療養、老人ホームへの入所その他のやむを得ない事情により、賃借人が認可住宅に居住することが困難となったとき
- 親族と同居するため、賃借人が認可住宅に居住する必要がなくなったとき
- 解約の期日が、「申入れの日から6か月以上経過する日」に設定されているとき
上記1、2を理由として解約の申入れをした場合には、解約申入の日から1か月が経過することによって賃貸借契約は終了します。3を理由として解約の申入れをした場合には、解約の期日の到来によって賃貸借契約は終了します(高齢者住まい法59条1項)。