礼金
礼金とは、賃貸借契約時に、返還されない一時金として、賃借人から賃貸人に支払われる金銭です。実際、賃貸住宅のうち、38.5%の契約で礼金を支払う契約となっています。礼金は、契約継続中も、契約終了後にも返還義務はありません。この点において、敷金や保証金などとは、異なります(東京地判昭46.3.31)。また、契約解除された場合にも、礼金は返還されません(東京地判平17.7.25)。その理由として、裁判所は「賃貸借契約が一旦成立した以上、その後、賃貸人の債務不履行(壊れた設備を修理してくれない等)によって本件賃貸借契約が解除されたからといって、本件賃貸借契約が成立した事実までがくつがえるものではなく、これは、あくまでも契約成立後の問題であるから、本件契約解除によって、賃貸人に本件礼金を返還すべき義務が生じると考えることはできない」と示しています。
更新料
更新料とは、賃貸借期間が満了し、契約を更新するに際し、賃借人から賃貸人に支払われる金銭です。法律に「更新料を払う義務」については規定していないので、更新料を支払う旨の特約(更新料特約)がなければ、賃借人に支払いの義務はありません。そして、更新料は賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払いにより賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、一般に、賃料の補充または前払い、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものとされています(最判平23.7.15)。
更新料特約の効力
更新料を定める場合、更新料の額が「賃料の額、賃貸借契約が更新される期間」等に照らし高額にすぎるなどの特段の事情があると、消費者契約法上無効となります。一方、高額とは言えない場合は、有効です。
【具体例】
- 賃貸借契約の期間1年、更新料の額を「賃料の2か月分」とする場合、更新料特約は有効です(最判平23.7.15)。
- 賃貸借契約の期間2年、更新料の額を「更新後の賃貸借契約における賃料の1か月分」とする場合、更新料特約は有効です(東京高判平25.3.28)。
任意規定の適用による場合に比して消費者である賃借人の義務を加重するものであって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する特約は無効となる(消費者契約法第10条)。