賃貸不動産経営管理士の役割・専門性

  1. 賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業法における「業務管理者」に選任されることによって、同法で業務管理者が行うべき事務(営業所又は事務所における業務に関し、法令で定める事項について管理及び監督する事務)を実施する役割を担う。
  2. 賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業法では「業務管理者」が直接行うべき業務とはされていない賃貸住宅管理業者や従業者が実施する事務についても、自ら実施等することによって、賃貸住宅の管理の適正化に資する役割を担う
  3. 賃貸不動産経営管理士は、特定賃貸借契約において特定転貸人(サブリース事業者)が行わなければならないとされている事務を実施等することによって、賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保および賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施に寄与する役割を担う。
  4. 賃貸不動産経営管理士は、賃借人の入居から退去に至るまでの各段階において、賃貸不動産管理の専門家として適正な賃貸借(転貸借)契約関係の確立のための業務を管理監督し、または自らが実施するとともに、転貸借契約の手続きに関与することによって、賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施に寄与する役割を担う。
  5. 賃貸不動産経営管理士は、不動産を巡る新たな政策課題新たな賃貸不動産の活用方式の普及等に積極的に協力をし、取り組むことによって、わが国の不動産政策の推進と、それに伴う国民生活の安定向上に貢献する役割を担う。

業務管理者になるには

賃貸不動産経営管理士は、登録証明事業による証明を受けている者として、賃貸住宅管理業者から選任されることにより、業務管理者となります。

賃貸住宅管理業者登録制度の登録を受けようとする賃貸住宅管理業者は、登録に際し、「業務管理者の配置状況」(施行規則別記様式第5号)を申請書に添付しなければならないとされており、当該配置状況を示す添付書面には、業務管理者ごとに、証明書記載の証明番号および証明年月日を明記し、登録証明事業が発行する証明書を添付しなければなりません。

また、すでに登録している賃貸住宅管理業者が新たに業務管理者を選任する場合には、その時点で登録事項の変更手続きをする必要はないですが、5年ごとの更新の時点で「業務管理者の配置状況」の書面を添付することとなります。

したがって、賃貸不動産経営管理士は、すでに登録している、またはこれから登録しようとする賃貸住宅管理業者から、その営業所または事務所における業務管理者に選任されるに際しては、一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会から発行された証明書を、賃貸住宅管理業者に提出することが必要となります。

業務管理者として行う事務

「業務管理者」に選任された賃貸不動産経営管理士は、「管理受託契約の契約内容の明確性」、「管理業務として行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の妥当性」その他の「入居者の居住の安定および賃貸住宅の賃貸に係る事業の円滑な実施」を確保するために必要な事項について、管理および監督を行うこととなります。

業務管理者として管理・監督を実施しなければならない事項は、以下のとおりです(賃貸住宅管理業法施行規則第13条)

  1. 管理受託契約の締結前の書面の交付及び説明(同法第13条)並びに管理受託契約の締結時の書面の交付(同法第14条)に関する事項(第1号・第2号)
    ⇒ 管理受託契約の締結前の書面の交付及び説明(同法第13条)及び管理受託契約の締結時の書面の交付(同法第14条)に関し、書面記載事項の明確性、契約内容の法令への適合性、説明方法の妥当性等について指導監督を行う。
  2. 賃貸住宅の維持保全の実施に関する事項(第3号)
    管理受託契約に基づき実施する維持保全の実施方法・実施内容の妥当性、法令への適合性等について指導監督を行う。
  3. 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項
    家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関し、受領した家賃等の賃貸人への送金処理や経理処理の妥当性、管理方法の法令への適合性(法第16条の規定による分別管理の方法への適合性)等についての指導監督を行う。
  4. 帳簿の備付け等(法第18条)に関する事項
    法第18条の規定による帳簿の備付け等に関し、賃貸人と締結した管理受託契約に係る記録・文書の管理・保存状況の正確性、保存事項や保存方法についての法第18条の規定への適合性等についての指導監督を行う。
  5. 賃貸人に対する定期報告(法第20条)に関する事項
    法第20条の規定による定期報告に関し、報告事項・報告方法・報告の頻度等についての法第20条の規定への適合性等についての指導監督を行う。
  6. 秘密の保持(法第21条)に関する事項
    法第21条の規定による秘密の保持に関し、情報管理,個人情報保護の方法の妥当性等についての指導監督を行う。
  7. 賃貸住宅の入居者からの苦情の処理に関する事項
    入居者からの苦情について、苦情の受付方法や苦情を踏まえた対応方法等の妥当性等についての指導監督を行う。
  8. 上記のほか、賃貸住宅の入居者の居住の安定及び賃貸住宅の質貸に係る事業の円滑な実施等を確保するため必要な事項として国土交通大臣が定める事項
    法における賃貸住宅管理業部分の施行後の運用状況を踏まえて、新たに業務管理者が管理・監督すべき事項が生じた際に国土交通大臣が定める事項について、法令への適合性等について指導監督を行う。

    賃貸住宅管理業者が行うべき業務の実施等

    賃貸住宅管理業法では、賃貸不動産経営管理士は、業務管理者に選任されることにより、上記「業務管理者として行う事務」の中で記載した1~8までの事項の「管理及び監督」を行うことが求められています。

    しかし、賃貸不動産経営管理士は、賃貸借契約や建物等の維持保全等につき高度の専門性と経験を有する者であることから、同法の目的である「賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施を図る」ためには「重要事項説明等、維持保全の実施、定期報告、苦情処理」については、業務管理者として選任されているか否かにかかわらず賃貸不動産経営管理士自らが、これらの業務の実施の担い手となることが考えられます。

    とりわけ、管理受託契約の締結前の説明(同法第13条)については、解釈運用の考え方でも、「業務管理者によって行われることは必ずしも必要ないが、業務管理者の管理及び監督の下に行われる必要があり、また、業務管理者又は一定の実務経験を有する者など専門的な知識及び経験を有する者によって行われることが望ましい」とされていることに留意すべきです。

    また、賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業法の内容等にも精通していることから、「金銭管理、帳簿の備付け等、秘密保持」についても、その制度設計や従業者への研修等に際し、管理業者内での中心的な役割を果たすことが考えられます。

    すなわち、賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業法における管理業者の業務に関し、業務管理者として法令上求められているものにとどまらず、その知識や能力、経験を活かし、より広範な業務を実施し、「賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施を図る」担い手としての役割を積極的に果たすことが期待されています。

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