特定賃貸借契約において賃貸住宅管理業法が適用される内容
この内容は「特定賃貸借契約の適正化に係る措置」ともいわれます。賃貸住宅管理業法では、賃貸住宅管理業者登録制度の創設等のほか、特定賃貸借契約(サブリース形式による賃貸住宅経営における家主と事業者との間の賃貸借契約)についても制限しています。サブリース契約について、賃貸住宅管理業法が適用される内容は下記の通りです。
- 広告に関する事項(誇大広告等の禁止(同法第28条)の遵守)
- 勧誘に関する事項(不当な勧誘等の禁止(同法第29条)の遵守)
- 特定賃貸借契約成立前の重要事項説明等(同法第30条)
- 特定賃貸借契約成立時の書面の交付(原賃貸借契約書の作成交付)(同法第31条)
- 業務・財産の状況を記載した書類の閲覧に関する事項(同法第32条)
特定転貸事業者と賃貸住宅管理業の登録との関係
特定転貸事業者は、一般に、特定賃貸借契約または当該特定賃貸借契約に付随する契約により、本来賃貸人が行うべき賃貸住宅の維持保全を、賃貸人の依頼により、賃貸人に代わって行っており、当該賃貸住宅の戸数が200戸以上であれば、賃貸住宅管理業法上、当該特定転貸事業者は、賃貸住宅管理業の登録を受けなければなりません(解釈・運用の考え方)。
この場合、管理している賃貸住宅の戸数が200戸以上の特定転貸事業者も、賃貸住宅管理業の登録を受けて、営業所または事務所ごとに業務管理者を選任しなければならない。
一方、特定転貸事業者が、「①賃借している賃貸住宅の維持保全を実施していないとき」や、「②維持保全等を実施していても管理戸数が200戸未満であるとき」は、賃貸住宅管理業者の登録の義務はありません。これらの場合、登録をしていない特定転貸事業者には、業務管理者は選任されないことになります。
注意点
特定転貸事業者における賃貸不動産経営管理士の役割
(1)業務管理者としての役割
賃貸住宅管理業の登録を受けている特定転貸事業者の場合、業務管理者に選任された賃貸不動産経営管理士は、賃貸住宅管理業法により業務管理者の行うべき事務として、営業所または事務所ごとに、下記事項の管理および監督を行うことになります。
- 重要事項説明書の交付及び説明・契約締結時書面の交付
- 賃貸住宅の維持保全の実施に関する事項
- 家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項
- 帳簿の備付け等に関する事項
- 賃貸人に対する定期報告に関する事項
- 秘密の保持に関する事項
- 賃貸住宅の入居者からの苦情の処理に関する事項
- 上記のほか、賃貸住宅の入居者の居住の安定及び賃貸住宅の質貸に係る事業の円滑な実施等を確保するため必要な事項として国土交通大臣が定める事項
また、業務管理者として選任されているか否かにかかわらず、賃貸不動産経営管理士は、「重要事項説明・維持保全の実施・定期報告・苦情処理」の業務を自ら実施することなども期待されるところである。
(2)特定賃貸借契約の適正化に係る措置における役割
特定転貸事業者の場合には、「(1)業務管理者としての役割」に加え、上記の「特定賃貸借契約の適正化に係る措置」についても、賃貸借契約の専門家である賃貸不動産経営管理士が、特定転貸事業者が行う業務を管理および監督し、または、自ら実施することにより、特定転貸事業者による特定賃貸借契約関係の適正化を図るとともに、同法の目的である「賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施」を実現することが考えられます。
重要事項説明については、解釈・運用の考え方でも、「第30条に基づく重要事項説明は、一定の実務経験を有する者や賃貸不動産経営管理士など専門的知識及び経験を有する者によって説明がなされることが望ましい」とされていることに留意すべきです。
(3)賃貸住宅管理業の登録をしていない特定転貸事業者の場合
特定転貸事業者が、賃貸住宅管理業法の規定を遵守し、特定賃貸借契約関係の適正化を図るとともに、同法の目的である「賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施」を実現することは、賃貸住宅管理業の登録を受けているか否かにかかわらず、等しく求められます。
したがって、賃貸不動産経営管理士は、所属している特定転貸事業者が賃貸住宅管理業の登録をしていない場合であっても、上記「(1)業務管理者としての役割」「(2)賃貸住宅管理業の登録をしていない特定転貸事業者の場合」の取組みの重要性・有用性を指摘し実践するよう助言するとともに、賃貸不動産経営管理士が主導的な役割を担って当該取組みを実現することが期待されます。