東京と大阪に営業所を1つずつ持っている管理会社は、業務管理者を1人だけ選んで、2つの営業所をまとめて担当させることができるでしょうか。賃貸不動産経営管理士の試験では、業務管理者について、営業所ごとに置く人数、業務管理者になれる人、管理・監督する仕事、ほかの営業所との兼務、業務管理者がいなくなったときの扱いなどが問われます。この記事では、動画「賃貸管理士 分野別 超入門」の第6回として、業務管理者が置かれるわけから、人数のルール、なれる人の要件、重要事項の説明との関係、兼務のルール、罰則と処分までを、宅建業法の専任の宅地建物取引士とくらべながら、初めての方にも分かるように解説します。
この記事の結論
登録を受けた賃貸住宅管理業者は、営業所や事務所ごとに、業務管理者を1人以上選ばなければなりません。宅建業法の「5人に1人」のような、社員の数に合わせて人数を増やすルールはありません。業務管理者になれるのは、2年以上の実務の経験などがあって、賃貸不動産経営管理士の登録を受けた人か、国が指定した講習を終えた宅地建物取引士です。重要事項の説明は業務管理者が自分で行う必要はなく、業務管理者の管理と監督のもとで行えばかまいません。業務管理者は、ほかの営業所の業務管理者を兼ねることはできず、1人もいなくなったら、新しく選ぶまでその営業所で管理受託契約を結べません。なので、最初の問題の答えは「できない」です。
業務管理者が置かれるわけ
たとえば、管理会社の営業所で、入ったばかりの社員が、オーナーへの説明をまちがえたり、預かった家賃の管理をいいかげんにしたりしたら、どうなるでしょうか。アパートを任せたオーナーも、そこに住む入居者も、困ってしまいます。会社として登録を受けていても、実際に仕事をするのは営業所の一人ひとりの社員なので、営業所の中で仕事が正しく行われているかを見る人が必要になるんです。
そこで、賃貸住宅管理業法では、営業所や事務所ごとに、仕事がきちんと行われているかを管理して、監督する担当者を置くことにしました。この担当者のことを「業務管理者」と言います。業務管理者は、営業所の仕事のまとめ役で、ほかの社員を指導して、仕事に目を配る人、というイメージで考えると分かりやすいです。法律では、登録を受けた管理業者は、営業所や事務所ごとに、業務管理者を1人以上選ばなければならない、とされています。
前回学んだとおり、営業所や事務所ごとに業務管理者を確実に置くことができると認められない会社は、そもそも管理業の登録を受けられません。登録と業務管理者は、セットで考える制度だということを、まず押さえておきましょう。
業務管理者は営業所ごとに1人以上
では、業務管理者は、1つの営業所に何人いればいいのでしょうか。法律で決められているのは、営業所や事務所ごとに「1人以上」ということだけです。
ここで、宅建業法とくらべてみます。宅建業法では、事務所で宅建業の仕事をする人の5人に1人以上の割合で、専任の宅地建物取引士を置かなければならない、というルールがあります。これに対して、賃貸住宅管理業法には、社員の数に合わせて業務管理者の人数を増やすルールはありません。なので、社員が50人いる営業所でも、業務管理者が1人いれば、法律の違反にはならないんです。
ただし、国土交通省の「解釈・運用の考え方」では、営業所が管理している部屋の数や社員の数などに合わせて、社員の仕事をきちんと指導して、管理と監督ができるだけの人数の業務管理者を置くことが望ましい、とされています。「望ましい」とは、守らなくても法律の違反にはならないけれど、できればそうしてほしい、という意味を言います。試験では、宅建業法の「5人に1人」という数字とまぜた文が出されることがあるので、どちらの法律の話なのかを確かめてから答えるようにしましょう。
| くらべる所 | 業務管理者(賃貸住宅管理業法) | 専任の宅地建物取引士(宅建業法) |
|---|---|---|
| 置く人数 | 営業所・事務所ごとに1人以上(社員の数に合わせて増やすルールはない) | 事務所で宅建業の仕事をする人の5人に1人以上 |
| 足りなくなったとき | 期限の決まりはない。1人もいなくなったら、新しく選ぶまで管理受託契約を結べない | 2週間以内に、新しい人を置くなどの措置をとる |
| 重要事項の説明 | 業務管理者でない社員が行ってもよい(業務管理者の管理と監督のもとで) | 必ず宅地建物取引士が行う |
業務管理者になれる人の要件
では、だれでも業務管理者になれるのでしょうか。答えは、なれません。業務管理者になるには、いくつかの条件を順番に満たす必要があります。
まず、前回学んだ、管理業の登録を受けられない人に当たる人は、業務管理者にもなれません。たとえば、破産をして、まだ復権を得ていない人や、管理業の登録を取り消されてから5年がたっていない人などです。「復権」とは、破産によって受けていた制限がなくなって、元の立場に戻ることを言います。
そのうえで、管理業務についての知識と能力を持っていることが必要です。くわしく言うと、管理業務の実務の経験が2年以上あるか、その実務の経験の代わりになる講習を終えていることなどが求められます。たとえば、管理会社で2年以上、オーナーとのやり取りや建物の維持保全の手配をしてきた人は、この条件を満たします。
賃貸不動産経営管理士か、講習を終えた宅地建物取引士
さらに、次の2つのどちらかに当たらなければなりません。1つ目は、賃貸不動産経営管理士の試験に合格して、登録を受けた人です。今、勉強しているこの資格が、まさに業務管理者になるための資格なんです。2つ目は、宅地建物取引士で、国土交通大臣が指定した、管理業務の実務についての講習を終えた人です。宅建士の資格を持っている人も、この講習を受ければ、業務管理者になることができます。
ここは、ひっかけに使われやすい所です。「宅地建物取引士であれば、業務管理者になることができる」という文は誤りです。宅建士の資格を持っているだけでは足りず、国が指定した講習を終えていることと、2年以上の実務の経験かその代わりになる講習の、両方が必要になります。賃貸不動産経営管理士の資格が、管理の仕事の中でとても大切な役割を持っていることが分かります。
| 順番 | 満たす条件 | 具体的な中身 |
|---|---|---|
| 1 | 登録を受けられない人に当たらない | 破産して復権を得ていない人、登録を取り消されてから5年がたっていない人などは、なれない |
| 2 | 管理業務の知識と能力がある | 管理業務の実務の経験が2年以上、またはその代わりになる講習を終えているなど |
| 3(どちらか) | 賃貸不動産経営管理士 | 試験に合格して、登録を受けた人 |
| 3(どちらか) | 宅地建物取引士+指定講習 | 国土交通大臣が指定した、管理業務の実務についての講習を終えた宅建士(資格だけでは足りない) |
業務管理者が管理・監督する仕事
では、業務管理者は、具体的にどんな仕事を管理して、監督するのでしょうか。施行規則で決められている主なものは、次のとおりです。1つ目は、管理受託契約を結ぶ前に行う重要事項の説明と、その書面の交付です。2つ目は、契約を結んだときに交付する書面です。3つ目は、維持保全の実施と、家賃や敷金、共益費などのお金の管理です。ほかにも、帳簿を備えること、オーナーへの定期報告、秘密を守ること、入居者からの苦情への対応などがあります。
たとえば、入居者から「上の部屋の音がうるさい」という苦情が管理会社に届いたとき、担当の社員がきちんと話を聞いて、必要な対応をしているかに目を配るのも、業務管理者の役目です。どれも、オーナーや入居者を守るために大切な仕事ばかりです。それぞれの仕事のくわしい中身は、次回から順番に学んでいきます。
| 業務管理者が管理・監督する仕事 | どんな仕事か |
|---|---|
| 重要事項の説明と書面の交付 | 管理受託契約を結ぶ前に、オーナーに契約の大事な点を説明して書面を渡す |
| 契約締結時の書面の交付 | 管理受託契約を結んだときに、契約の中身を書いた書面を渡す |
| 維持保全とお金の管理 | 建物の点検や修繕の手配と、家賃・敷金・共益費などの管理 |
| 帳簿・定期報告・秘密を守ること | 帳簿を備え、オーナーに管理の状況を報告し、仕事で知った秘密を守る |
| 入居者からの苦情への対応 | 騒音などの苦情に、担当の社員がきちんと対応しているかを見る |
重要事項の説明は業務管理者が自分で行わなくてよい
では、管理受託契約の重要事項の説明は、業務管理者が自分で行わなければならないのでしょうか。答えは、自分で行わなくてもかまいません。業務管理者の仕事は、ほかの社員の仕事を管理して、監督することだからです。なので、重要事項の説明そのものは、業務管理者ではない社員が行っても、法律の違反にはなりません。ただし、その説明は、業務管理者の管理と監督のもとで行う必要があります。
また、国の考え方では、説明をする人は、業務管理者や、一定の実務の経験がある人など、専門的な知識と経験のある人が望ましい、とされています。さらに、重要事項の説明は、オーナーから管理を任されようとしている管理業者が、自分で行う必要がある、ともされています。説明の仕事だけを、別の会社に任せることはできない、ということです。
宅建業法の重要事項の説明は、必ず宅地建物取引士が行わなければなりません。宅建業法を先に学んだ方は、「重要事項の説明は資格者が行うもの」と思い込みやすいので、賃貸住宅管理業法ではルールがちがうことを、ここでしっかり区別しておきましょう。
ほかの営業所の業務管理者は兼ねられない
ここで、記事の最初の問題に戻ります。東京と大阪の2つの営業所を、1人の業務管理者がまとめて担当することはできるでしょうか。答えは、できません。法律では、業務管理者は、ほかの営業所や事務所の業務管理者を兼ねることができない、とされています。
これは、営業所どうしが遠くはなれているから、という理由ではありません。たとえば、となりの駅にある営業所でも、また、少しの間だけでも、兼ねることはできないんです。国土交通省の「賃貸住宅管理業法FAQ集」でも、一時的にほかの営業所の業務管理者を兼ねることはできない、とされています。業務管理者は、その営業所の仕事を実際に管理して、監督する人だからです。なので、最初の問題の会社は、東京の営業所と大阪の営業所に、それぞれ1人以上の業務管理者を置く必要があります。
業務管理者がいなくなったら管理受託契約を結べない
では、業務管理者が会社を辞めてしまって、営業所に1人もいなくなったら、どうなるでしょうか。その営業所では、新しい業務管理者を選ぶまでの間、管理受託契約を新しく結んではいけません。たとえば、オーナーから「うちのアパートの管理をお願いしたい」と頼まれても、業務管理者がいないうちは、契約を結ぶことができないんです。業務管理者がいないと、重要事項の説明などが正しく行われているかを、だれも管理できないからです。
辞めた場合だけではありません。業務管理者が、破産をして、まだ復権を得ていないなど、登録を受けられない人に当たることになった場合も、その営業所の業務管理者の全員がそうなれば、同じく契約を結べません。一方で、業務管理者が2人いて、1人が辞めても、もう1人が残っていれば、契約を結ぶことができます。「全員がいなくなったとき」に契約を結べなくなる、という形になっている点に注意しましょう。
宅建業法では、専任の宅地建物取引士が足りなくなったら、2週間以内に新しい人を置くなどの措置をとらなければなりません。これに対して、賃貸住宅管理業法には、このような期限の決まりはなく、新しく選ぶまで契約を結べない、という形になっているんです。「業務管理者が欠けたら2週間以内に選ばなければならない」という文は、宅建業法とまぜた誤りの文です。
業務管理者を置かなかったときの罰則と処分
では、業務管理者を置かないまま営業を続けたら、どうなるでしょうか。営業所に業務管理者を選ばなかったときは、30万円以下の罰金が科されることがあります。業務管理者が1人もいないのに管理受託契約を結んだときも、同じく30万円以下の罰金が科されることがあります。社員がこの違反をしたときは、その社員だけでなく、会社にも罰金が科されることがあります。
さらに、国土交通大臣から、業務の改善の命令を受けたり、登録の取消しや、1年以内の業務の停止の処分を受けたりすることもあります。また、営業所や事務所ごとに業務管理者を置くことができないと考えられる会社は、そもそも登録を受けられません。なので、登録の申請では、営業所ごとの業務管理者を書いた書類を出すことになっています。
| 場面 | どうなるか |
|---|---|
| 営業所に業務管理者を選ばなかった | 30万円以下の罰金(社員が違反すれば会社にも罰金) |
| 業務管理者が1人もいないのに管理受託契約を結んだ | 30万円以下の罰金(社員が違反すれば会社にも罰金) |
| 国土交通大臣の処分 | 業務改善命令、登録の取消し、1年以内の業務の停止 |
| 業務管理者を確実に置けると認められない会社 | 登録を受けられない |
同じ営業所のほかの仕事は兼ねられる
では、業務管理者は、ほかの仕事と兼ねることはできるのでしょうか。たとえば、同じ営業所で、宅建業の専任の宅地建物取引士をしている人が、業務管理者を兼ねることはできるでしょうか。答えは、兼ねることができます。
国の考え方では、業務管理者が、宅地建物取引士の仕事など、ほかの仕事を兼ねても、法律の違反にはならない、とされています。宅建業法の側でも、専任の宅地建物取引士が、業務管理者として管理の仕事をすることは差し支えない、とされています。賃貸の仲介と管理の両方を行っている不動産会社では、同じ人が両方の役割を持つことができるわけです。ただし、兼ねていても、業務管理者として、社員の仕事を指導して、監督することが、きちんとできなければなりません。
一方で、前に見たとおり、ほかの営業所の業務管理者を兼ねることはできません。同じ営業所の中のほかの役割は兼ねられるけれど、ほかの営業所の業務管理者は兼ねられない、と分けて覚えておきましょう。
| 兼ねようとする役割 | 兼ねられるか | ポイント |
|---|---|---|
| 同じ営業所の専任の宅地建物取引士 | 兼ねられる | 業務管理者としての指導と監督がきちんとできることが必要 |
| ほかの営業所・事務所の業務管理者 | 兼ねられない | となりの駅の営業所でも、一時的でも、兼ねられない |
試験で間違えやすいポイント
1つ目は、「業務管理者は、営業所で働く社員の5人に1人以上の割合で置かなければならない」という文です。これは誤りです。5人に1人は、宅建業法の専任の宅地建物取引士のルールで、業務管理者は営業所ごとに1人以上です。
2つ目は、「宅地建物取引士は、業務管理者になることができる」という文です。これも、資格だけでよいように書かれていれば誤りです。国が指定した講習を終えていることと、2年以上の実務の経験かその代わりになる講習が必要です。
3つ目は、「管理受託契約の重要事項の説明は、業務管理者が自分で行わなければならない」という文です。これも誤りで、業務管理者の管理と監督のもとで、ほかの社員が説明してもかまいません。
4つ目は、「近くの営業所であれば、一時的に、1人の業務管理者が2つの営業所の業務管理者を兼ねることができる」という文です。これも誤りです。距離や期間に関係なく、ほかの営業所の業務管理者は兼ねられません。
5つ目は、「業務管理者が2人いる営業所で1人が辞めたときは、新しく選ぶまで管理受託契約を結べない」という文です。これも誤りです。契約を結べなくなるのは、業務管理者が全員いなくなったときです。問題文を読むときは、「全員」なのか「1人」なのか、どちらの法律の話なのかを確かめてから答えを選ぶようにしましょう。
次回は、管理受託契約を結ぶ前に行う、重要事項の説明について学びます。
この記事を書いた人
賃貸管理士塾の講師、小野一輝です。賃貸不動産経営管理士・宅建・行政書士の試験対策講師として、初めて法律を学ぶ方にも分かる解説を心がけています。この記事と動画は、令和9年4月1日に施行されている賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律と同法施行規則、宅地建物取引業法、国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」「賃貸住宅管理業法FAQ集」「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に基づいて作成しています。動画で分かりづらかった部分は、個別指導でていねいに解説しています。
よくある質問
Q. 業務管理者は、1つの営業所に何人置けばいいですか?
A. 営業所や事務所ごとに1人以上です。宅建業法の専任の宅地建物取引士のような、社員の5人に1人以上というルールはありません。ただし、国の考え方では、管理している部屋の数や社員の数に合わせて、社員を指導して監督できるだけの人数を置くことが望ましい、とされています。
Q. 宅地建物取引士の資格を持っていれば、業務管理者になれますか?
A. 資格だけではなれません。国土交通大臣が指定した、管理業務の実務についての講習を終えていることと、管理業務の実務の経験が2年以上あるか、その代わりになる講習を終えていることなどが必要です。
Q. 賃貸不動産経営管理士の試験に合格すれば、すぐに業務管理者になれますか?
A. 試験に合格したうえで、賃貸不動産経営管理士の登録を受けていることが必要です。あわせて、管理業務の実務の経験が2年以上あるか、その代わりになる講習を終えていることなどが求められ、管理業の登録を受けられない人に当たらないことも必要です。
Q. 管理受託契約の重要事項の説明は、業務管理者が自分でしなければなりませんか?
A. 自分でしなくてもかまいません。業務管理者ではない社員が、業務管理者の管理と監督のもとで説明すれば、法律の違反にはなりません。ただし、説明は管理を任されようとしている管理業者が自分で行う必要があり、説明だけを別の会社に任せることはできません。
Q. 近くの営業所なら、1人の業務管理者が2つの営業所を担当できますか?
A. できません。業務管理者は、ほかの営業所や事務所の業務管理者を兼ねることができず、となりの駅の営業所でも、一時的でも兼ねることはできません。
Q. 業務管理者が辞めてしまったら、どうなりますか?
A. その営業所の業務管理者が1人もいなくなった場合は、新しい業務管理者を選ぶまで、その営業所で管理受託契約を新しく結ぶことができません。業務管理者が2人いて1人が残っていれば、契約を結ぶことができます。宅建業法のような2週間以内という期限の決まりはありません。
Q. 業務管理者が、同じ営業所の専任の宅地建物取引士を兼ねることはできますか?
A. できます。国の考え方では、業務管理者が宅地建物取引士の仕事など、ほかの仕事を兼ねても法律の違反にはならない、とされています。ただし、業務管理者として、社員の仕事を指導して監督することがきちんとできなければなりません。
Q. 業務管理者を置かなかったときの罰則を教えてください。
A. 営業所に業務管理者を選ばなかったときや、業務管理者が1人もいないのに管理受託契約を結んだときは、30万円以下の罰金が科されることがあり、会社にも罰金が科されることがあります。さらに、業務改善命令や、登録の取消し、1年以内の業務の停止の処分を受けることもあります。



