完成したら入居者を募集する予定で、今はまだ建築中のアパートは、賃貸住宅管理業法でいう「賃貸住宅」に当たるでしょうか。賃貸不動産経営管理士の試験では、賃貸住宅管理業法の目的と、法律に出てくる言葉の定義が問われます。言葉の意味があいまいなままだと、問題文を正しく読むことができません。この記事では、動画「賃貸管理士 分野別 超入門」の第4回として、法律ができたわけと目的、そして「賃貸住宅」「管理業務」「賃貸住宅管理業」「賃貸住宅管理業者」「特定賃貸借契約」「特定転貸事業者」の6つの言葉を、具体的な例を使って初めての方にも分かるように解説します。
この記事の結論
賃貸住宅管理業法は、入居者の居住の安定の確保と、賃貸住宅を貸す事業の公正で円滑な実施を目的としていて、そのためにサブリースのルールと、管理業者の登録の制度を設けています。「賃貸住宅」は人が住むために貸す家や家の部分のことで、建築中や空き部屋でも、人に貸す予定なら当たります。「管理業務」は、維持保全と、それと一緒に行う家賃などのお金の管理で、エレベーターだけの点検・修理のように建物の一部の設備だけを見る場合は維持保全に当たりません。オーナーの親族や、親会社・子会社などが借りる場合は、特定賃貸借契約に当たりません。
賃貸住宅管理業法ができたわけ
たとえば、アパートを持っているオーナーが、年をとって、自分では管理ができなくなったら、どうするでしょうか。多くのオーナーは、管理会社に管理を任せるようになります。ところが、以前は、管理会社について法律で決められたルールがほとんどありませんでした。そのため、オーナーから預かった家賃をきちんと管理しない会社や、サブリースで「家賃はずっと変わりません」と説明して、あとから家賃を下げる会社などが現れ、トラブルが増えていったんです。
そこで、2020年(令和2年)に作られたのが、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」です。名前が長いので、試験の勉強では「賃貸住宅管理業法」や「管理業法」と呼ばれています。サブリースのルールは2020年12月に、管理業者の登録の制度は2021年6月に、それぞれ始まりました。
法律の目的は「入居者」と「事業」の両方
法律の最初の条文(第1条)には、この法律の目的が書かれています。まず前提として、社会や経済の変化にともなって、賃貸住宅が国民の生活の基盤として大切な役割を持つようになっている、という考えがあります。そのうえで、目的として次の2つが書かれています。
| 段階 | 第1条に書かれていること |
|---|---|
| 直接の目的 | 1. 賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保 2. 賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施 |
| そのための手段 | 賃貸住宅管理業の登録の制度と、特定賃貸借契約(サブリース)を適正にするための措置 |
| 目指すもの | 良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保 |
| 最終の目的 | 国民生活の安定向上と、国民経済の発展に寄与すること |
試験では、「賃貸住宅管理業法は、入居者を守ることだけを目的とした法律である」のような文が出ることがあります。これは誤りです。目的には、入居者の居住の安定と、賃貸住宅を貸す事業の公正で円滑な実施の、両方が書かれています。オーナーや管理会社が安心して事業を行えるようにすることも、この法律の大切な目的なんです。
目的を実現するための2つのしくみ
この目的を実現するために、法律は大きく2つのしくみを作りました。1つ目は、サブリースの契約を正しく行わせるためのルールです。オーナーとサブリース業者の間の契約について、誇大広告の禁止、不当な勧誘の禁止、契約の前の重要事項の説明などが決められています。このルールは、サブリース業者の規模に関係なく適用されます。
2つ目は、賃貸住宅を管理する会社の登録の制度です。登録をした管理業者には、営業所ごとに業務管理者を置くことや、管理受託契約を結ぶ前の重要事項の説明、預かったお金の分別管理、オーナーへの定期の報告などの義務が決められています。どちらのしくみも、この先の回で1つずつ詳しく学んでいきます。
まず覚えたい6つの言葉
たとえば、問題文に「賃貸住宅管理業者」と書いてあったら、どんな会社のことか、すぐに分かるでしょうか。法律の問題は、言葉の意味が分かっていないと正しく読めません。賃貸住宅管理業法の第2条には、法律で使う言葉の定義がまとめて書かれています。今回覚えてほしいのは、次の6つです。
| 言葉 | 意味 | 覚え方・注意点 |
|---|---|---|
| 賃貸住宅 | 人に貸すための住宅(人が住むための家や家の部分) | 建築中や空き部屋でも、人に貸す予定なら当たる。ホテル・旅館などは当たらない |
| 管理業務 | 維持保全と、それと一緒に行う家賃・敷金・共益費などのお金の管理 | お金の管理だけでは当たらない |
| 賃貸住宅管理業 | オーナーから任されて管理業務を行う事業 | オーナーが自分で管理するのは当たらない |
| 賃貸住宅管理業者 | 国土交通大臣の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者 | 「管理業」は仕事、「管理業者」は登録をした会社など |
| 特定賃貸借契約 | 入居者に転貸する事業のために、サブリース業者がオーナーから借りる契約 | マスターリース契約とも呼ばれる。親族や親会社・子会社などが借りる場合は当たらない |
| 特定転貸事業者 | 特定賃貸借契約で借りた部屋を、入居者に転貸する事業を営む者 | いわゆるサブリース業者のこと |
ここからは、1つずつ具体的な例で見ていきます。
「賃貸住宅」とは?部分ごとに考える
たとえば、1階がコンビニで、2階と3階がアパートになっている建物は、建物全体が賃貸住宅になるでしょうか。法律では、賃貸住宅を「賃貸の用に供する住宅」、つまり人に貸すための住宅としています。そして、住宅とは、人が住むための家や、家の一部のことを言います。なので、この建物の場合、賃貸住宅に当たるのは、人が住むための2階と3階の部分だけです。1階のコンビニの部分は、人が住むためのものではないので、賃貸住宅には当たりません。建物全体で考えるのではなく、部分ごとに、人が住むためのものかを考える、ということです。
建築中のアパートや空き部屋は当たる
ここで、記事の最初の問題に戻ります。完成したら入居者を募集する予定で、今はまだ建築中のアパートは、賃貸住宅に当たるでしょうか。答えは、当たります。建物が完成したあとに入居者を募集する予定で、人が住むために使われることがはっきりしている場合は、建築中でも賃貸住宅に当たるとされています。同じように、入居者が出ていって空き部屋になっている部屋も、新しい入居者を募集しているなら、賃貸住宅に当たります。今、人が住んでいるかどうかではなく、人が住むために貸す予定かどうかで決まるんです。
ホテル・旅館・民泊は当たらない
反対に、人が泊まっていても、賃貸住宅に当たらないものがあります。法律は、人の生活の本拠として使う目的以外で使われているものを、賃貸住宅から外しています。具体的には、旅館業法の許可を受けて営業しているホテルや旅館、国家戦略特別区域法の特区民泊として使われている施設、住宅宿泊事業法の届出をした住宅で、実際に人を泊めるために使われている間のものです。これらは、生活の場所ではなく、泊まるための場所だからです。
ウィークリーマンション・マンスリーマンションは使い方で判断
では、1週間や1か月だけ借りる、ウィークリーマンションやマンスリーマンションは、どうでしょうか。旅館業法の許可を受けて、ホテルのように営業している場合は、賃貸住宅には当たりません。一方で、旅館業法の許可を受けずに、生活の場所として長く住むことが予定されている場合は、賃貸住宅に当たります。「マンション」という名前で決まるのではなく、旅館業法の許可を受けているか、生活の場所として使われるかで判断します。
「管理業務」とは?維持保全とお金の管理
たとえば、エレベーターの会社が、アパートのエレベーターだけを点検して修理している場合、管理業務に当たるでしょうか。答えは、当たりません。管理業務には2種類あり、1つ目が「維持保全」です。維持保全とは、部屋と、廊下や階段などの共用部分について、点検や清掃などをして維持することと、必要な修繕をすることを、まとめて行うことを言います。点検だけ、修繕だけを行う場合や、エレベーターのような建物の一部の設備だけを見ている場合は、維持保全には当たらないんです。
また、オーナーのために、修繕の会社との契約を媒介したり、取り次いだり、代理で結んだりする仕事も、維持保全の業務に含まれます。管理会社が自分で修繕をしなくても、オーナーのために修繕の手配をまとめて行っていれば、維持保全を行っていることになります。
お金の管理は維持保全と一緒のときだけ
では、入居者から家賃や敷金を受け取って管理する仕事は、どうでしょうか。これは、管理業務の2つ目の、家賃・敷金・共益費などのお金の管理です。ただし、お金の管理は、維持保全と一緒に行う場合だけ、管理業務になります。家賃の集金だけを任されていて、維持保全は行っていない会社は、管理業務を行っていることにはなりません。「お金の管理だけでも管理業務に当たる」という文は誤りなので注意します。
「賃貸住宅管理業」と「賃貸住宅管理業者」のちがい
オーナーから任されて、この管理業務を行う事業のことを、「賃貸住宅管理業」と言います。ポイントは「任されて」という部分です。オーナーが自分の建物を自分で管理する場合は、人から任されていないので、賃貸住宅管理業には当たりません。
そして、国土交通大臣の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む会社などのことを、「賃貸住宅管理業者」と言います。管理する部屋が200戸以上の会社は、登録をしなければなりません。200戸未満の会社は登録をしなくても営業できますが、自分から登録することもでき、登録をすれば、賃貸住宅管理業者として法律の義務を守る必要があります。「管理業」は仕事の名前、「管理業者」は登録をした会社などの名前、と分けて覚えておきましょう。登録の細かいルールは、次回に学びます。
「特定賃貸借契約」と「特定転貸事業者」
サブリース業者が、オーナーからアパートを1棟まとめて借りて、その部屋を入居者に貸すとき、オーナーとサブリース業者の間の契約は、法律では何と呼ばれるでしょうか。答えは、「特定賃貸借契約」です。入居者に貸す、つまり転貸する事業をするために、サブリース業者が借りる契約のことで、マスターリース契約と呼ばれることもあります。一方、サブリース業者と入居者の間の契約は、転貸借契約(サブリース契約)と呼ばれ、特定賃貸借契約とは別のものです。
そして、特定賃貸借契約で借りた部屋を、入居者に貸す事業をしている会社などを、「特定転貸事業者」と言います。試験の問題文で「特定転貸事業者」と書かれていたら、サブリース業者のことだと思って読んでください。
身内が借りる場合は特定賃貸借契約に当たらない
では、オーナーの息子が、父親のアパートを借りて、その部屋を入居者に貸す場合も、特定賃貸借契約に当たるでしょうか。答えは、当たりません。借りる人が、オーナーと特別な関係にある場合は、特定賃貸借契約から外されているんです。たとえば、オーナーが個人であれば、オーナーの親族や、オーナーやその親族が役員をしている会社が借りる場合です。オーナーが会社であれば、その親会社や子会社、関連会社などが借りる場合も当たりません。家族や身内の会社どうしなら、だまされて契約する心配が少ないので、サブリースのルールで守る必要がない、と考えられているからです。
試験で間違えやすいポイント
1つ目は、「建築中の建物は、まだ人が住んでいないので、賃貸住宅に当たらない」という文です。これは誤りです。完成後に入居者を募集する予定で、人が住むために使われることがはっきりしていれば、建築中でも賃貸住宅に当たります。空き部屋も、入居者を募集しているなら当たります。
2つ目は、「店舗と住宅が一緒になった建物は、建物全体が賃貸住宅に当たる」という文です。これも誤りです。賃貸住宅に当たるのは、人が住むための部分だけです。
3つ目は、「エレベーターの保守点検と修繕だけを行う業務も、維持保全に当たる」という文です。これも誤りです。維持保全は、部屋と共用部分の点検・清掃などの維持と、必要な修繕をまとめて行うことで、建物の一部の設備だけを見る場合は当たりません。
4つ目は、「オーナーの親族が転貸の目的で借りる契約も、特定賃貸借契約に当たる」という文です。これも誤りで、オーナーと密接な関係にある人が借りる場合は、特定賃貸借契約から外されています。問題文にこれらの言葉が出てきたら、上の一覧を思い出して、どの言葉の話なのかを確かめてから答えを選ぶようにしましょう。
次回は、管理業の登録について、200戸以上の考え方や、5年ごとの更新、登録を受けられない場合(欠格事由)などを学びます。
この記事を書いた人
賃貸管理士塾の講師、小野一輝です。賃貸不動産経営管理士・宅建・行政書士の試験対策講師として、初めて法律を学ぶ方にも分かる解説を心がけています。この記事と動画は、令和9年4月1日に施行されている賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律と同法施行規則、国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」に基づいて作成しています。動画で分かりづらかった部分は、個別指導でていねいに解説しています。
よくある質問
Q. 賃貸住宅管理業法の目的は何ですか?
A. 賃貸住宅の入居者の居住の安定の確保と、賃貸住宅の賃貸に係る事業の公正かつ円滑な実施を図ることです。そのために管理業者の登録の制度とサブリースのルールを設け、良好な居住環境を備えた賃貸住宅の安定的な確保を図り、国民生活の安定向上と国民経済の発展に寄与することを目指しています。
Q. 建築中のアパートは賃貸住宅に当たりますか?
A. 当たります。完成したあとに入居者を募集する予定で、人が住むために使われることがはっきりしていれば、建築中でも賃貸住宅に当たります。入居者を募集している空き部屋も同じです。
Q. 1階が店舗で2階以上が住宅の建物は、全体が賃貸住宅になりますか?
A. なりません。賃貸住宅に当たるのは、人が住むための住宅の部分だけです。店舗の部分は賃貸住宅に当たりません。
Q. ウィークリーマンションやマンスリーマンションは賃貸住宅に当たりますか?
A. 旅館業法の許可を受けてホテルのように営業している場合は当たりません。旅館業法の許可を受けずに、生活の場所として長く住むことが予定されている場合は当たります。
Q. エレベーターの保守点検と修理だけを行う業務は管理業務に当たりますか?
A. 当たりません。維持保全は、部屋と共用部分の点検・清掃などの維持と、必要な修繕をまとめて行うことを言うので、建物の一部の設備だけを見る業務は維持保全に当たりません。
Q. 家賃の集金だけを任されている場合も管理業務に当たりますか?
A. 当たりません。家賃・敷金・共益費などのお金の管理は、維持保全と一緒に行う場合だけ管理業務になります。
Q. 賃貸住宅管理業と賃貸住宅管理業者は何がちがいますか?
A. 賃貸住宅管理業は、オーナーから任されて管理業務を行う事業のことです。賃貸住宅管理業者は、国土交通大臣の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者のことです。管理する部屋が200戸以上の場合は登録が必要です。
Q. オーナーの親族が転貸の目的で借りる契約は特定賃貸借契約に当たりますか?
A. 当たりません。オーナーの親族や、オーナーやその親族が役員をしている会社、オーナーが会社の場合の親会社・子会社など、オーナーと密接な関係にある者が借りる場合は、特定賃貸借契約から除かれています。



