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管理受託契約の契約締結時書面とは?10の記載事項・重要事項説明とのちがい・罰則を初学者向けに解説【2027年対策】

ある管理会社が、オーナーに重要事項の説明をきちんとしてから、管理受託契約を結びました。契約書には大切なことが全部書いてあって、オーナーのハンコももらっています。それでも、この管理会社は、契約書とは別に、もう1枚、書面を渡さなければならないのでしょうか。賃貸不動産経営管理士の試験では、管理受託契約を結んだときに渡す「契約締結時書面」について、渡す時期、重要事項の説明とのちがい、渡す相手、書く事柄、電子の方法、変更のときの扱い、罰則などが問われます。この記事では、動画「賃貸管理士 分野別 超入門」の第8回として、契約締結時書面の役割から、10の記載事項、罰則、契約書で兼ねられるかどうかまでを、前回の重要事項の説明とくらべながら、初めての方にも分かるように解説します。

この記事の結論

管理業者は、オーナーと管理受託契約を結んだときは、遅滞なく、契約の中身を書いた書面(契約締結時書面)をオーナーに渡さなければなりません。書面は渡せばよく、説明はいりません。相手が管理業者や宅建業者であっても、省くことはできません。書く事柄は10個で、重要事項の説明の11個から「報酬に入っていない費用」を除いたものです。オーナーの承諾があれば電子の方法で渡せます。中身を変えたときは、少なくとも変わった事柄について書面を渡し直します。渡さなかったときなどは30万円以下の罰金の対象で、会社も罰せられます。10個の事柄が全部書いてある契約書なら、その契約書を契約締結時書面にできます。なので、最初の問題の答えは「もう1枚渡す必要はない」です。ただし、重要事項の説明の書面とは1つにまとめられません。

契約締結時書面とは

たとえば、オーナーが、管理会社と口約束だけで管理の契約を結んだとします。1年たって、オーナーは「報酬は1か月3万円のはずだ」と言い、管理会社は「1か月4万円と約束した」と言ったら、どうでしょうか。書いたものが何もなければ、どちらが正しいのか、だれにも分かりませんよね。

そこで、賃貸住宅管理業法では、管理業者が、オーナーと管理受託契約を結んだときは、遅滞なく、契約の中身を書いた書面をオーナーに渡さなければならない、としました。これを「契約締結時書面」と言います。「管理受託契約」とは、オーナーから、賃貸住宅の維持保全などの管理の仕事を任される契約のことを言います。また、「遅滞なく」とは、理由のない遅れがないように、すぐに、という意味を言います。

契約締結時書面は、決まった契約の中身を、あとからいつでも確かめられるようにして、オーナーと管理業者の間のトラブルを防ぐためのルールなんです。条文でいうと、賃貸住宅管理業法の第14条に置かれています。

重要事項の説明とのちがい

前回学んだ重要事項の説明も、オーナーに書面を渡すルールでした。では、2つの書面は何がちがうのでしょうか。

いちばんのちがいは、渡すタイミングと役割です。重要事項の説明の書面は、契約を結ぶ前に渡して、オーナーが契約を結ぶかどうかを決めるために使います。これに対して、契約締結時書面は、契約を結んだあとに渡して、決まった中身を確かめるために使います。渡すタイミングと役割がちがうので、国の考え方では、この2つの書面を1つにまとめて渡すことはできない、とされています。

もう1つのちがいは、説明がいるかどうかです。重要事項の説明は、書面を渡したうえで、説明もしなければなりません。一方で、契約締結時書面は、渡せばよく、説明までする必要はないんです。試験では「契約締結時書面も、説明をしなければならない」という文が出されることがあるので、注意しましょう。

くらべる所重要事項の説明(第13条)契約締結時書面(第14条)
渡す時期契約を結ぶ前契約を結んだとき(遅滞なく)
役割契約を結ぶかどうかを決めるため決まった中身を確かめるため
説明必要いらない(渡せばよい)
相手が管理業者・宅建業者など説明も書面もいらない書面は必要
事項の数11個10個
罰則なし(監督処分はある)30万円以下の罰金(会社も)

相手が管理業者や宅建業者でも省けない

では、契約締結時書面は、どんなオーナーにも渡さなければならないのでしょうか。たとえば、オーナーが、不動産の取引を仕事にしている宅建業者の会社だったら、どうでしょうか。

前回学んだとおり、重要事項の説明は、管理業者や宅建業者のような、専門的な知識と経験がある相手には、説明も書面もいりませんでした。ところが、契約締結時書面は、ちがいます。第14条には、第13条のような「専門家は除く」という決まりがありません。なので、相手が管理業者や宅建業者であっても、契約締結時書面は渡さなければならないんです。

専門家どうしの契約でも、決まった契約の中身を、書いたもので残しておくことは大切だからです。「重要事項の説明は専門家には不要、契約締結時書面は専門家にも必要」と、セットで区別しておきましょう。

契約締結時書面に書く10の事項

では、契約締結時書面には、何を書くのでしょうか。書かなければならない事柄は、法律と施行規則で、全部で10個決められています。

前半の5つは、だれが、どの建物を、どんな仕事として、いくらで、いつまで管理するのか、という契約の土台です。3つ目の「管理業務の内容と実施方法」は、たとえば、建物の点検や清掃、家賃の集金など、どんな仕事を、どのように行うのか、ということです。

後半の5つは、管理業者が仕事の一部をほかの会社に任せる「再委託」、管理業者がどんなときに責任を負い、どんなときに負わないのかという「責任と免責」、オーナーへの報告、契約の更新と解除、入居者への周知です。「再委託」とは、管理業者が、管理の仕事の一部を、ほかの会社に任せることを言います。

番号書く事項中身の例
1管理業者の名前・登録年月日・登録番号どの会社が管理するのか
2管理業務の対象になる賃貸住宅建物の名前・場所・部屋の数など
3管理業務の内容と実施方法点検・清掃・家賃の集金などを、どう行うのか
4報酬の額・支払の時期・支払の方法毎月いくらを、いつ、どう払うのか
5契約期間いつからいつまで管理を任せるのか
6管理業務の一部の再委託(定めがあるとき)清掃を清掃会社に任せる、など
7責任と免責(定めがあるとき)どんなときに管理業者が責任を負わないか
8オーナーへの報告管理の状況の報告について
9契約の更新と解除(定めがあるとき)更新のしかた、解除のしかた
10管理業務の内容・実施方法の入居者への周知入居者に、管理の仕事の中身を知らせること

表の6、7、9は、契約にその決まりがあるときに書く事柄です。たとえば、再委託の決まりがない契約なら、再委託について書く必要はありません。

重要事項の説明の11個とのちがいは1つだけ

こうして見ると、前回の重要事項の説明の11個と、ほとんど同じですよね。では、重要事項の説明にはあって、契約締結時書面にはないものは、何でしょうか。

それは、「報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって、オーナーが通常負担するもの」です。たとえば、部屋の修理の手配が別料金になる、といったことです。この費用は、契約を結ぶかどうかを決めるときに、とても大切な情報です。なので、契約を結ぶ前の重要事項の説明では、必ず説明します。一方で、契約締結時書面には、書かなければならない事柄として決められていません。

覚え方としては、「重要事項の説明は11個、契約締結時書面は10個で、そのちがいは、報酬に入っていない費用」と整理しておくと、試験で迷いにくくなります。

書面は承諾があれば電子の方法で渡せる

では、契約締結時書面は、紙でなければならないのでしょうか。答えは、重要事項の説明と同じで、オーナーの承諾があれば、紙の代わりに、メールなどの電子の方法で渡すこともできます。第14条2項が、重要事項の説明の電子の方法についての決まりを当てはめているんです。

ただし、承諾は、前もってとっておく必要があります。どんな方法で送るのかをオーナーに示して、書面か電子の方法で承諾をもらいます。たとえば、電話で「メールで送ってください」と言われただけでは足りません。また、電子の方法で送るときは、オーナーが、プリンターで印刷して書面を作ることができて、途中で書きかえられていないかを確かめられる形でなければなりません。

契約の中身を変えたときは渡し直す

では、契約の途中で中身を変えたときは、どうでしょうか。たとえば、管理の報酬を、1か月3万円から4万円に上げることにしたとします。

国の考え方では、契約の中身を変える契約を結んだときも「契約を結んだとき」に当たるので、あらためて契約締結時書面を渡す必要がある、とされています。このときは、少なくとも、変わった事柄について書面を渡せば足ります。10個を全部書き直す必要はありません。

一方で、中身はそのままで、契約の期間だけを延ばすときは、書面を渡し直す必要はありません。会社の中身は変わらずに、会社の名前だけを変えた、のような、形だけの変更のときも同じです。ここは、前回の重要事項の説明と考え方がそろっているので、一緒に覚えてしまいましょう。

場面書面を渡し直すか
報酬の額など、書面に書いた事柄を変えた渡す(少なくとも変わった事柄について)
中身はそのままで、契約の期間だけを延ばすいらない
会社の中身は変わらず、名前だけを変えたいらない(形だけの変更)

渡さなかったときは30万円以下の罰金

では、契約締結時書面を渡さなかったら、どうなるのでしょうか。前回学んだとおり、重要事項の説明をしなかったことについての罰則は、ありませんでした。ところが、契約締結時書面は、ちがいます。

書面を渡さなかったとき、書かなければならない事柄が抜けている書面を渡したとき、うその書いてある書面を渡したときは、30万円以下の罰金の対象になります(第44条)。電子の方法で渡す場合も、同じように扱われます。しかも、違反をした従業員だけでなく、その会社にも罰金が科されることがあります。これを「両罰規定」と言います(第45条)。

また、罰金とは別に、国土交通大臣から、業務の改善の命令を受けたり、業務の停止や、登録の取消しの処分を受けたりすることもあります。「罰則があるのは契約締結時書面のほう」と覚えておきましょう。なお、50万円以下の罰金は、サブリースの特定賃貸借契約の重要事項説明や契約締結時書面の違反についての額なので、まぜないように注意しましょう。

契約書で兼ねられる(最初の問題の答え)

ここで、記事の最初の問題に戻ります。重要事項の説明をして、契約書も交わしたのに、契約書とは別に、もう1枚、書面を渡さなければならないでしょうか。答えは、渡す必要はありません。

国の考え方では、管理受託契約の契約書に、契約締結時書面に書くべき10個の事柄が全部書いてあれば、その契約書を契約締結時書面にすることができる、とされています。なので、実際には、契約書と契約締結時書面を、1枚にまとめることができるんです。

ただし、書くべき事柄が1つでも抜けていれば、足りない事柄を書いた書面を、別に渡す必要があります。また、1つにまとめられるのは、契約書と契約締結時書面です。重要事項の説明の書面とは、渡すタイミングがちがうので、まとめられません。

組み合わせ1つにまとめられるか
契約書 + 契約締結時書面できる(10個の事柄が全部書いてあれば)
重要事項の説明の書面 + 契約書(契約締結時書面)できない(渡すタイミングがちがう)

宅建業法の37条書面とのくらべ

宅建業法にも、契約を結んだあとに渡す書面があります。いわゆる37条書面です。役割は似ていますが、中身にはちがいがあるので、宅建を学んだ方は区別しておきましょう。

宅建業法の37条書面は、宅地建物取引士が記名しなければなりませんが、賃貸住宅管理業法の契約締結時書面には、そのような資格者の記名の決まりはありません。一方で、相手が宅建業者であっても書面を省けない、という点は共通しています。問題文を読むときは、どちらの法律の話なのかを、まず確かめるようにしましょう。

まとめ

管理業者は、管理受託契約を結んだときは、遅滞なく、オーナーに契約締結時書面を渡さなければなりません。書面は渡せばよく、説明はいりません。相手が管理業者や宅建業者であっても、書面は必要です。書く事柄は10個で、重要事項の説明の11個とのちがいは、報酬に入っていない費用です。再委託、責任と免責、更新と解除は、契約にその決まりがあるときに書きます。

書面は、前もって承諾をもらえば電子の方法で渡せます。中身を変えたときは、少なくとも変わった事柄について書面を渡し直し、期間だけの延長や形だけの変更なら渡し直す必要はありません。渡さなかったときなどは30万円以下の罰金の対象で、会社も罰せられます。契約書に10個の事柄が全部書いてあれば、契約書で代わりにできますが、重要事項の説明の書面とはまとめられません。

次回は、再委託の禁止や分別管理など、管理業者が守らなければならない義務について学びます。

この記事を書いた人

賃貸管理士塾の講師、小野一輝です。賃貸不動産経営管理士・宅建・行政書士の試験対策講師として、初めて法律を学ぶ方にも分かる解説を心がけています。この記事と動画は、令和9年4月1日に施行されている賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律と同法施行規則、宅地建物取引業法、国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」「賃貸住宅管理業法FAQ集」に基づいて作成しています。動画で分かりづらかった部分は、個別指導でていねいに解説しています。

よくある質問

Q. 管理受託契約の契約締結時書面は、いつ渡せばいいですか?

A. 管理受託契約を結んだときに、遅滞なく渡さなければなりません。遅滞なくとは、理由のない遅れがないように、すぐに、という意味です。契約を結ぶ前に渡す重要事項の説明の書面とは、渡すタイミングがちがいます。

Q. 契約締結時書面は、渡すときに説明もしなければなりませんか?

A. いいえ。契約締結時書面は渡せばよく、説明までする必要はありません。書面を渡したうえで説明もしなければならないのは、契約を結ぶ前の重要事項の説明のほうです。

Q. オーナーが宅建業者や管理業者のときも、契約締結時書面は必要ですか?

A. 必要です。重要事項の説明は、管理業者や宅建業者のような専門的な知識と経験がある相手にはいりませんが、契約締結時書面には、そのような相手を除く決まりがありません。相手がだれであっても、書面は渡さなければなりません。

Q. 契約締結時書面に書く事項は、いくつありますか?

A. 全部で10個です。管理業者の名前・登録年月日・登録番号、対象の賃貸住宅、管理業務の内容と実施方法、報酬、契約期間、再委託、責任と免責、オーナーへの報告、更新と解除、入居者への周知です。重要事項の説明の11個とのちがいは、報酬に入っていない費用でオーナーが通常負担するものが入っていないことです。

Q. 契約締結時書面は、メールなどで渡してもいいですか?

A. オーナーの承諾があれば、メールなどの電子の方法で渡せます。承諾は前もって、方法を示したうえで、書面か電子の方法でもらう必要があり、電話で頼まれただけでは足りません。また、オーナーが印刷して書面を作れて、書きかえられていないかを確かめられる形で送る必要があります。

Q. 契約を更新したり、中身を変えたりしたときは、書面を渡し直しますか?

A. 報酬の額など、書面に書いた事柄を変えたときは、あらためて書面を渡します。このときは、少なくとも変わった事柄について書面を渡せば足ります。中身はそのままで契約の期間だけを延ばすときや、会社の名前だけを変えたような形だけの変更のときは、渡し直す必要はありません。

Q. 契約締結時書面を渡さなかったら、どうなりますか?

A. 書面を渡さなかったとき、書くべき事柄が抜けている書面やうその書いてある書面を渡したときは、30万円以下の罰金の対象になります。違反した従業員だけでなく、会社にも罰金が科されることがあります(両罰規定)。このほか、業務改善命令や、業務の停止、登録の取消しの処分を受けることもあります。

Q. 管理受託契約の契約書を、契約締結時書面にすることはできますか?

A. できます。契約書に、契約締結時書面に書くべき10個の事柄が全部書いてあれば、その契約書を契約締結時書面にできます。1つでも抜けていれば、足りない事柄を書いた書面を別に渡します。ただし、重要事項の説明の書面とは、渡すタイミングがちがうので、1つにまとめることはできません。

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