賃貸不動産経営管理士の資格を持っている人が、管理会社の2つの営業所で、業務管理者を1人で兼ねることはできるでしょうか。賃貸不動産経営管理士の試験では、業務管理者のルールと、資格を持つ人が守るべき「倫理憲章」が問われます。この記事では、動画「賃貸管理士 分野別 超入門」の第3回として、賃貸住宅管理業法で決められている業務管理者の役割と、賃貸不動産経営管理士協議会の倫理憲章の7つの項目を、初めての方にも分かるように解説します。
この記事の結論
登録をした管理業者は、営業所や事務所ごとに、業務管理者を1人以上置く必要があります。業務管理者になるには、2年以上の実務の経験(または実務講習の修了)と、賃貸不動産経営管理士の登録など(または宅地建物取引士で指定講習の修了)が必要です。業務管理者は、ほかの営業所の業務管理者を兼ねることはできず、業務管理者がいない営業所では、新しく管理受託契約を結べません。また、賃貸不動産経営管理士の倫理憲章には7つの項目があり、秘密を守る義務は、その仕事をしなくなったあとも続きます。
今回学ぶ2つのルール
このテーマは、大きく2つに分かれます。1つ目は、管理会社の中で、賃貸不動産経営管理士が「業務管理者」として果たす役割です。これは、賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)で決められている、法律のルールです。2つ目は、賃貸不動産経営管理士として守るべき倫理です。こちらは、試験を実施している賃貸不動産経営管理士協議会が作った「倫理憲章」という、資格を持つ人の心がまえのルールです。試験では、どちらのルールの話なのかを分けて考えることが大切です。
業務管理者は営業所・事務所ごとに1人以上
たとえば、200戸以上の賃貸住宅を管理しているB社が、東京・大阪・名古屋に3つの営業所を持っているとします。B社は国に登録をした管理業者なので、営業所や事務所ごとに、業務管理者を1人以上置かなければなりません。つまり、東京にも大阪にも名古屋にも、それぞれ業務管理者が必要で、本社に1人いればよい、というわけではありません。営業所の数を数えて、少なくともその数だけ業務管理者が必要になる、と覚えておきます。
業務管理者になるための2つの条件
業務管理者には、誰でもなれるわけではありません。次の2つの条件を、両方とも満たす必要があります。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 実務の経験 | 管理の仕事について2年以上の実務の経験があること(足りない人は、実務講習の修了で代えられる) |
| 2. 専門の知識 | 賃貸不動産経営管理士として登録している人、または、宅地建物取引士で指定された講習を修了した人 |
宅地建物取引士の人も、指定された講習を修了すれば、2つ目の条件を満たせます。「宅地建物取引士なら講習なしで業務管理者になれる」という文は誤りなので、ひっかけに注意します。また、宅地建物取引士でも、1つ目の実務の経験の条件は必要です。
業務管理者はほかの営業所と兼ねられない
記事の最初の問題の答えは、「兼ねることはできない」です。業務管理者は、ほかの営業所や事務所の業務管理者になることができない、とされています。業務管理者は、その営業所の管理の仕事をしっかり見ている必要があり、1人で2つの営業所を見ていると、どちらの仕事にも目が届かなくなってしまうからです。営業所が2つあれば、業務管理者は、それぞれ別の人を置く必要があります。
業務管理者がいなくなったら新しい契約は結べない
業務管理者が会社を辞めるなどして、営業所に業務管理者がいなくなった場合、その営業所では、新しい業務管理者を置くまで、オーナーとの間で新しく管理受託契約を結んではいけない、とされています。管理会社にとっては、仕事を増やせなくなるということです。なので、管理会社は、業務管理者がいなくならないように、資格を持つ人を育てたり、採用したりする必要があります。賃貸不動産経営管理士が、管理会社にとって欠かせない資格だと言われるのは、このためです。
業務管理者の仕事は「管理・監督」
業務管理者は、営業所の管理の仕事が法律に従って正しく行われるように、管理し、監督します。管理・監督する主な事項は、次のとおりです。
- オーナーへの重要事項の説明と、その書面の交付
- 契約を結んだときに渡す書面の交付
- 建物の維持保全と、家賃などのお金の管理
- 帳簿の備え付け・記録
- オーナーへの定期の報告
- 秘密を守ること
- 入居者からの苦情への対応
ここで注意したいのは、業務管理者は、これらの仕事を全部自分でする人ではない、という点です。たとえば、オーナーへの重要事項の説明は、業務管理者の管理・監督のもとであれば、業務管理者でない社員が行うこともできます。業務管理者は、ほかの社員の仕事を、管理し、監督する立場の人です。
賃貸不動産経営管理士に倫理が求められる理由
たとえば、管理会社の社員が、入居者の家族構成や勤め先をほかの人に話してしまったら、入居者は安心して住むことができなくなります。賃貸不動産経営管理士は、オーナーの大切な財産と、入居者の生活の場所の両方にかかわる仕事をするので、資格を持つ人には高い倫理が求められます。そこで、賃貸不動産経営管理士協議会は、資格を持つ人が守るべきルールとして、7つの項目からなる「倫理憲章」を定めています。
倫理憲章の7つの項目
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 1. 公共的使命 | 賃貸住宅の管理には、社会全体のための役割があることを自覚する |
| 2. 法令の遵守と信用保持 | 法令とルールを守り、賃貸管理の業界の信用を傷つける行いや、社会の常識から見て好ましくない行いをしない |
| 3. 信義誠実の義務 | 相手の信頼を裏切らないよう、誠実に仕事をする |
| 4. 公正と中立性の保持 | 公正で中立な立場で仕事をし、もめごとが起きたら誠意をもって円満な解決に努める |
| 5. 専門的サービスの提供および自己研鑽の努力 | 質の高いサービスを提供し、知識を学び続ける |
| 6. 能力を超える業務の引き受け禁止 | 自分の能力を超える仕事は引き受けない |
| 7. 秘密を守る義務 | 仕事で知った秘密を正当な理由なく漏らさない(仕事をしなくなったあとも同じ) |
公共的使命と、法令の遵守と信用保持
たとえば、資格を持つ人が休みの日にお酒に酔って騒ぎを起こしたら、「仕事とは関係ないから問題ない」と言えるでしょうか。倫理憲章の2つ目は、法令やルールを守ることに加えて、賃貸管理の業界全体の信用を傷つけるような行いや、社会の常識から見て好ましくない行いをしないことを求めています。仕事の時間の外であっても、こうした行いをすれば、業界全体の信用が下がってしまいます。
信義誠実の義務と、公正と中立性の保持
オーナーと入居者の意見が分かれたとき、賃貸不動産経営管理士はどちらの味方をすればよいでしょうか。倫理憲章は、相手の信頼を裏切らないように誠実に仕事をすること(信義誠実の義務)と、公正で中立な立場で仕事をすること(公正と中立性の保持)を求めています。オーナーから仕事を任されていても、オーナーの言い分だけを聞いて入居者に不利な説明をすることは、公正とは言えません。入居者の話もきちんと聞き、もめごとが起きたときは、誠意をもって円満に解決するよう努めることが求められます。
自己研鑽の努力と、能力を超える業務の引き受け禁止
オーナーから相続税の細かい計算を頼まれたら、どうすればよいでしょうか。賃貸不動産経営管理士は、専門家として質の高いサービスを提供し、資格を取ったあとも知識を学び続ける必要があります。一方で、自分の能力を超える仕事は引き受けてはいけません。相続税の細かい計算のような税理士などの専門家の仕事は、自分で引き受けずに専門家を紹介します。できないことを、できると言って引き受けると、オーナーに大きな損をさせてしまうおそれがあるからです。
秘密を守る義務は辞めたあとも続く
管理会社を辞めた人が、前の会社で知った入居者の勤め先を友人に話してもよいでしょうか。答えは、いけません。倫理憲章の7つ目は、仕事の中で知った秘密を、正当な理由なく漏らしてはいけないとしていて、その仕事をしなくなったあとも同じです。また、賃貸住宅管理業法でも、管理業者と、そこで働く人に秘密を守る義務が決められていて、管理業者でなくなったあとや、会社を辞めたあとも、秘密を守らなければなりません。「辞めたあとも秘密は守る」とセットで覚えておきます。
試験で間違えやすいポイント
1つ目は、「業務管理者は、複数の営業所の業務管理者を兼ねることができる」という文です。これは誤りで、ほかの営業所の業務管理者を兼ねることはできません。
2つ目は、「管理受託契約の重要事項の説明は、業務管理者が自ら行わなければならない」という文です。これも誤りです。業務管理者の管理・監督のもとであれば、業務管理者でない社員が説明することもできます。
3つ目は、「賃貸不動産経営管理士は、オーナーから仕事を任されているので、オーナーの利益だけを考えればよい」という文です。これは、倫理憲章の公正と中立性の保持に反します。同じように、「頼まれた仕事は、能力を超えていても引き受けるべきだ」という文も、能力を超える業務の引き受け禁止に反します。迷ったときは、オーナーにも入居者にも誠実か、専門家としてふさわしいかを考えると、答えを出しやすくなります。
次回からは、賃貸住宅管理業法を詳しく学びます。最初のテーマは、法律の目的と言葉の定義です。
この記事を書いた人
賃貸管理士塾の講師、小野一輝です。賃貸不動産経営管理士・宅建・行政書士の試験対策講師として、初めて法律を学ぶ方にも分かる解説を心がけています。この記事と動画は、令和9年4月1日に施行されている法令(施行予定を含む)、国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」、賃貸不動産経営管理士協議会の倫理憲章に基づいて作成しています。動画で分かりづらかった部分は、個別指導でていねいに解説しています。
よくある質問
Q. 業務管理者は何人置く必要がありますか?
A. 登録をした管理業者は、営業所や事務所ごとに、業務管理者を1人以上置く必要があります。本社に1人いればよいわけではなく、営業所の数だけ少なくとも必要です。
Q. 業務管理者になるための条件は何ですか?
A. 管理の仕事について2年以上の実務の経験(または実務講習の修了)があり、さらに賃貸不動産経営管理士として登録している人か、宅地建物取引士で指定された講習を修了した人であることが必要です。
Q. 宅地建物取引士は講習なしで業務管理者になれますか?
A. なれません。宅地建物取引士は、指定された講習を修了する必要があります。また、2年以上の実務の経験(または実務講習の修了)の条件も必要です。
Q. 1人の業務管理者が2つの営業所を兼ねることはできますか?
A. できません。業務管理者は、ほかの営業所や事務所の業務管理者になることができないとされています。
Q. 業務管理者がいなくなった営業所ではどうなりますか?
A. 新しく業務管理者を置くまで、その営業所では、オーナーとの間で新しく管理受託契約を結んではいけないとされています。
Q. 重要事項の説明は業務管理者がしなければなりませんか?
A. 業務管理者が自ら行う必要はありません。業務管理者の管理・監督のもとであれば、業務管理者でない社員が説明することもできます。
Q. 賃貸不動産経営管理士の倫理憲章にはどんな項目がありますか?
A. 公共的使命、法令の遵守と信用保持、信義誠実の義務、公正と中立性の保持、専門的サービスの提供および自己研鑽の努力、能力を超える業務の引き受け禁止、秘密を守る義務の7つです。
Q. 秘密を守る義務は、仕事を辞めたあとも続きますか?
A. 続きます。倫理憲章では、その仕事をしなくなったあとも同じとされています。賃貸住宅管理業法でも、管理業者と働く人の秘密を守る義務は、管理業者でなくなったあとや会社を辞めたあとも続きます。



