サブリース業者がオーナーから建物を借りて、その部屋を入居者に貸しているとき、入居者に部屋を貸しているのは、オーナーでしょうか、それともサブリース業者でしょうか。賃貸不動産経営管理士の試験では、オーナー・管理会社・入居者・サブリース業者の4人が、いろいろな組み合わせで問題文に出てきます。この記事では、動画「賃貸管理士 分野別 超入門」の第2回として、賃貸住宅の管理の2つの形(管理受託方式とサブリース方式)と、賃貸住宅管理業法でいう「管理業務」「賃貸住宅」の意味を、初めての方にも分かるように解説します。
この記事の結論
賃貸住宅の管理には、管理会社に管理を任せる「管理受託方式」と、サブリース業者に建物を貸す「サブリース方式」があります。管理受託方式では、入居者に部屋を貸しているのはオーナーで、管理会社はオーナーの代わりに管理をします。サブリース方式では、入居者に部屋を貸しているのはサブリース業者です。賃貸住宅管理業法の管理業務の中心は「維持保全」で、点検などの維持と修繕の両方を行うことを言います。200戸以上を管理する会社は国への登録が必要ですが、サブリースのルールは、部屋の数に関係なくすべてのサブリース業者に当てはまります。
賃貸住宅の管理に出てくる4人の登場人物
賃貸住宅の管理の話には、次の4人が出てきます。建物を持っている「オーナー」、部屋に住む「入居者」、オーナーから管理を任される「管理会社」、そして、建物を借りて入居者に貸す「サブリース業者」です。試験の問題文では、オーナーは「賃貸人」、入居者は「賃借人」と書かれることも多いので、言葉が変わっても同じ人のことだと分かるようにしておきます。
この4人の関係には、大きく分けて2つの形があります。1つは、管理会社に管理を任せる「管理受託方式」、もう1つは、サブリース業者に建物を貸す「サブリース方式」です。この2つの違いが分かると、賃貸住宅管理業法の問題が、ぐっと読みやすくなります。
たとえば、アパートを相続した会社員の場合
会社員の田中さんが、親から10部屋のアパートを相続したとします。田中さんは平日は仕事なので、アパートのことにあまり時間を使えません。でも、アパートを持っていると、やることはたくさんあります。毎月の家賃を集め、払っていない人がいれば連絡をします。廊下や階段を掃除して、建物や設備を点検し、壊れた所があれば修理を手配します。入居者から「お湯が出ない」と連絡があれば、夜でも対応が必要です。入居者が出ていくときは、部屋の状態を確かめて、敷金の精算もします。
これを全部、自分1人で行うのは大変です。そこで、多くのオーナーは、管理の仕事を専門の会社に任せたり、建物ごとサブリース業者に貸したりしています。
管理受託方式とは?契約の関係を整理
「管理受託方式」とは、オーナーが管理会社に、賃貸住宅の管理の仕事を任せる形のことを言います。オーナーと管理会社の間で結ぶ、管理の仕事を任せる契約を「管理受託契約」と言います。
ここで大事なのは、部屋を貸す契約(賃貸借契約)は、オーナーと入居者の間で直接結ぶという点です。つまり、入居者から見て部屋を貸している人はオーナーで、管理会社は、オーナーの代わりに家賃を集めたり、点検や修理を手配したりしますが、部屋を貸している本人ではありません。なので、空き部屋が出て家賃が入らないときは、その損はオーナーが負うことになります。管理会社は、管理の仕事の報酬として、オーナーから管理の手数料を受け取ります。
「管理業務」とは?維持保全は点検と修繕のセット
管理会社が、建物の清掃と点検だけを任されていて、修理の手配は一切しない場合、法律でいう「管理業務」に当たるでしょうか。答えは、当たりません。
賃貸住宅管理業法では、管理業務の中心を「維持保全」と呼んでいます。「維持保全」とは、点検や清掃などをして建物や設備を維持することと、必要な修繕をすることを、両方まとめて行うことを言います。たとえば、定期的に建物を点検し、傷んだ所が見つかれば修繕まで行う、という一連の仕事が維持保全です。点検や清掃だけ、または修繕だけを任されている場合は、維持保全には当たりません。「維持と修繕がセット」と覚えておくと、問題を解くときに迷いません。
お金の管理が管理業務になるのはどんなとき?
管理業務には、もう1つ、家賃や敷金、共益費などを入居者から受け取って管理する「お金の管理」があります。ただし、お金の管理が管理業務になるのは、維持保全と一緒に行う場合だけです。たとえば、家賃を集めるだけの仕事は、それだけでは管理業務には当たりません。同じように、入居者からの苦情を聞くだけの仕事も、維持保全をしていないので、管理業務には当たりません。
また、入居者を募集して契約の仲介をする仕事は、宅建業法のルールで行う仕事で、賃貸住宅管理業法の管理業務とは別のものです。問題文に「〜だけを行う」という言葉が出てきたら、その仕事に維持保全が入っているかを確かめるようにします。
「賃貸住宅」に当たる建物・当たらない建物
賃貸住宅管理業法でいう「賃貸住宅」とは、人が住むための家や部屋を貸すもののことを言います。アパートやマンションの部屋、一戸建ての貸家は、賃貸住宅です。
| 賃貸住宅に当たるもの | 賃貸住宅に当たらないもの |
|---|---|
| アパート・マンションの部屋 | 事務所としてだけ貸している部屋 |
| 一戸建ての貸家 | 旅館業法の許可を受けたホテル・旅館 |
| (人が住むために貸しているもの) | 民泊として使われている部屋 |
マンションの一室でも、事務所としてだけ貸している部屋は、人が住むためのものではないので、賃貸住宅には当たりません。ポイントは、建物の見た目ではなく、契約で人が住むために貸しているかどうかです。
管理業の登録が必要なのは200戸以上
管理会社なら、どこでも国に登録しなければならないわけではありません。登録が必要になるのは、管理している賃貸住宅が200戸以上の会社です。200戸より少ない会社は、登録をしなくても管理の仕事をすることができます。ただし、200戸より少ない会社でも、自分から登録をすることはでき、登録をすると、200戸以上の会社と同じように法律のルールを守らなければなりません。
また、オーナーが自分の建物を自分で管理するときは、人から任されているわけではないので、管理業には当たりません。田中さんが自分でアパートを管理していたときは、登録はいらない、ということです。
サブリース方式とは?入居者に貸しているのは誰?
記事の最初の問題の答えは、サブリース業者です。「サブリース方式」では、まず、オーナーとサブリース業者の間で、建物を貸す契約を結びます。この契約を、法律では「特定賃貸借契約」と言い、マスターリース契約と呼ぶこともあります。そして、サブリース業者は、借りた部屋を入居者に貸します。このように、借りた物をさらにほかの人に貸すことを「転貸」と言います。
つまり、サブリース業者は、オーナーから見ると借りる人で、入居者から見ると貸す人になります。入居者が家賃を払う相手も、オーナーではなくサブリース業者です。
オーナーにとってのサブリースの良い点と注意点
オーナーにとって、サブリースのいちばん大きな良い点は、空き部屋があっても、サブリース業者から決まった家賃を受け取れることです。空き部屋の損はサブリース業者が負い、入居者の募集や入居者とのやり取りもサブリース業者が行うので、オーナーの手間は少なくなります。
ただし、サブリース業者がオーナーに払う家賃は、ずっと同じとは限りません。周りの家賃が下がったときなどは、サブリース業者から家賃を下げてほしいと言われることがあります。「30年間、家賃は変わりません」と説明を受けていたのに、家賃を下げられて困ってしまうオーナーが増えたことが、法律でサブリースのルールが作られた理由の1つです。
サブリースのルールは部屋の数に関係なく当てはまる
ここは、管理会社のルールと違うので、間違えやすい所です。管理会社の登録には200戸という基準がありますが、サブリースのルールは、部屋の数に関係なく、すべてのサブリース業者に当てはまります。サブリース業者が国に登録する制度もありません。
たとえば、うその広告や、大げさな広告を出すことは禁止されています。このルールは、サブリース業者だけでなく、サブリース業者と組んでオーナーに勧誘をする、建設会社や不動産会社などの「勧誘者」にも当てはまります。また、サブリース業者は、契約を結ぶ前に、家賃が下がることがあるといった大事なことを、オーナーに書面で説明しなければなりません。
サブリース業者が管理もするときは両方のルール
サブリース業者が、建物の点検や修繕もしている場合、サブリース業者は管理会社と同じように維持保全をしていることになります。なので、管理する部屋が200戸以上あれば、サブリース業者も管理業の登録をしなければなりません。サブリース業者には、サブリースのルールと管理業のルールの両方がかかることがあるので、問題文にサブリース業者が出てきたら、どちらのルールの話なのかを確かめるようにします。
試験で間違えやすいポイント
このテーマは、言葉の意味をあいまいに覚えていると、問題文の言い回しにひっかかりやすい所です。次のような文が出てきたら、正しいかどうかを自分で判断できるか確かめてみてください。
1つ目は、「建物の点検と清掃だけを、オーナーから任されて行う事業は、賃貸住宅管理業に当たる」という文です。これは誤りです。維持保全は、維持と修繕の両方を行うことなので、点検と清掃だけでは維持保全に当たらず、管理業務にもなりません。反対に、「点検をして、必要な修繕も手配する」と書かれていれば、維持保全に当たります。
2つ目は、「家賃の集金だけを行う事業者も、200戸以上なら登録が必要になる」という文です。これも誤りです。お金の管理は、維持保全と一緒に行う場合だけ管理業務になるので、集金だけなら管理業務に当たらず、戸数に関係なく登録の対象になりません。
3つ目は、「管理戸数が200戸より少ないサブリース業者には、誇大広告の禁止は当てはまらない」という文です。これも誤りです。200戸の基準は管理業の登録の話で、サブリースのルールは部屋の数に関係なく当てはまります。ここで「200戸」という数字につられないことが大切です。
4つ目は、「サブリース方式では、入居者に部屋を貸しているのはオーナーである」という文です。これも誤りです。入居者と部屋を貸す契約を結んでいるのはサブリース業者なので、入居者の貸主はサブリース業者です。オーナーは、サブリース業者に建物を貸している人という位置づけになります。
どの文も、図を書いて「誰と誰の間の契約か」「その仕事に維持保全が入っているか」「管理業のルールかサブリースのルールか」を確かめれば、正しく判断できます。
管理受託方式とサブリース方式の比較
| 管理受託方式 | サブリース方式 | |
|---|---|---|
| オーナーとの契約 | 管理受託契約 | 特定賃貸借契約(マスターリース契約) |
| 入居者に部屋を貸す人 | オーナー | サブリース業者 |
| 空き部屋の損を負う人 | オーナー | サブリース業者 |
| 主なルール | 200戸以上なら国への登録が必要 | 部屋の数に関係なくサブリースのルール |
問題を解くときは、まず、誰と誰の間の契約なのかを図に書いて確かめると、ひっかけに気づきやすくなります。次回は、賃貸不動産経営管理士の役割と、守るべき倫理について解説します。
この記事を書いた人
賃貸管理士塾の講師、小野一輝です。賃貸不動産経営管理士・宅建・行政書士の試験対策講師として、初めて法律を学ぶ方にも分かる解説を心がけています。この記事と動画は、令和9年4月1日に施行されている法令(施行予定を含む)と、国土交通省の「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方」に基づいて作成しています。動画で分かりづらかった部分は、個別指導でていねいに解説しています。
よくある質問
Q. 管理受託方式とサブリース方式の違いは何ですか?
A. 管理受託方式は、オーナーが管理会社に管理の仕事を任せる形で、入居者に部屋を貸しているのはオーナーです。サブリース方式は、サブリース業者がオーナーから建物を借りて入居者に貸す形で、入居者に部屋を貸しているのはサブリース業者です。
Q. サブリースのとき、入居者の貸主は誰になりますか?
A. サブリース業者です。サブリース業者はオーナーから見ると借りる人、入居者から見ると貸す人になり、入居者が家賃を払う相手もサブリース業者です。
Q. 賃貸住宅管理業法の「維持保全」とは何ですか?
A. 点検や清掃などをして建物や設備を維持することと、必要な修繕をすることを、両方まとめて行うことを言います。点検や清掃だけ、または修繕だけの場合は、維持保全に当たりません。
Q. 家賃の集金だけを行う会社は、管理業務をしていることになりますか?
A. なりません。お金の管理が管理業務になるのは、維持保全と一緒に行う場合だけです。入居者からの苦情を聞くだけの仕事も、管理業務には当たりません。
Q. 事務所として貸している部屋や民泊は「賃貸住宅」に当たりますか?
A. 当たりません。賃貸住宅は、人が住むために貸す家や部屋のことなので、事務所としてだけ貸している部屋、旅館業法の許可を受けたホテル・旅館、民泊として使われている部屋は含まれません。
Q. 管理戸数が200戸より少ない会社も登録できますか?
A. できます。登録が必要なのは200戸以上の会社ですが、200戸より少ない会社も自分から登録でき、登録すると200戸以上の会社と同じように法律のルールを守る必要があります。
Q. サブリースのルールにも200戸の基準はありますか?
A. ありません。サブリースのルールは部屋の数に関係なく、すべてのサブリース業者に当てはまり、国への登録の制度もありません。誇大広告の禁止などは、サブリース業者と組んで勧誘する建設会社や不動産会社にも当てはまります。
Q. サブリース業者が建物の点検や修繕もしている場合はどうなりますか?
A. 維持保全をしていることになるので、管理する部屋が200戸以上あれば、管理業の登録も必要です。サブリースのルールと管理業のルールの両方がかかることがあります。



